09 February, 11

「山水画の風景。」

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AM9:30。Hostelまで迎えに来たMicro BusにBackpackごと乗込むと、他十数名の多国籍な参加者たちと共に、今日の『川下り』の出発点となる“町から離れた桟橋”へ向かう。

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この移動がたっぷり1時間以上はかかるのだが、その間、窓から見え続けている“怪しげな空模様”に、少し憂鬱な気分にさせられた。せっかく桂林までやってきたのに、大事な日に限ってこんな曇り空、しかも、時おり小雨がパラついているようだ…。

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それでも、静かな川面に浮かんだBamboo Boat(といっても、実際に竹でできているわけではなかった。竹のような節付のプラスティックTubeを使ったイカダ風のボートです。)に“多国籍軍(Tour 参加者)が乗り込んだ頃には、空の遠く向うの方に少しづつ青空が見え始めていたのである。普段の行いが功を奏したか、ギリギリ何とかなりそうな予感。なにせこの手のOpen Styleなボートだから、雨が吹き込んできたりしたら、かなり悲惨な事になるだろう。どうか、あの小さな青空が、少しづつでも広がっていきますように…。

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ボートのスピードは、意外に早い様な、それでいてのんびりな様な、不思議な感じ。決して遅くはないと思うんだけど、周囲の風景の静けさと山々のカタチが乗船者の気分を『のんびり』にさせてくれるのかもしれない。静止時には空気も暖かく感じたのだが、いざボートが走り出したら、風はやはりそれなりに冷たい。暖かい服を着て来てよかった…。周りの西洋人の中には、タンクトップで乗り込んだ女もあり。何考えてんだろ、西洋人って。

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中国に入ってから、景色の良いところではこういう『結婚式風景』や『結婚記念写真屋』を見かける事が多い様な気がする。…麗江やら、九塞溝やら…。結婚式の写真だけでなく、記念写真的なモノが中国人は好きなのかもしれない。昆明では、子供(赤ちゃん)の記念写真を専門に撮る店舗がやたら目に付いたし。ガラス張りの店内には、ディズニー風のセットやら、お姫様風の衣装など、様々なバリエーションの“場面設定”が用意されていた。そんな写真館が、通りによってはずらり何件も並ぶのである。設備にかなり金が掛かってそうなところからして、ああいうのが結構メジャーなんじゃないかと思うのです。

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走り始めて約1時間もたつと、徐々に周りの風景が『想像していた桂林』に近づいてきた。…それでもMに言わせると「思ってたのと、山の雰囲気が違うなぁ…。」ということになる。まぁ確かに、山水画のイメージから想像してたより、山肌に緑が多い様な気もする。何と言うか、もう少し『禿山の水平部分にだけ苔の様に緑が生えている』というのが理想なのである。とても個人的で勝手な“理想”だけど。

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2人が乗り込んだBamboo Boatには比較的“年配”のオバさん連中(イギリス人かな)が同乗していて、だから船内の雰囲気はいたって落ち着いたものである。どんな風景を前にしても必要以上に興奮もしないし、かといって醒めているわけでもなし。周りにあまりウルサクされると、この大自然の雰囲気を静かに感じる事が出来ないだろうから、そういう意味じゃとても素敵な『旅の道ずれ』たちであった。

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そういえば、先日どこかの宿で拾って読んだ『スプートニクの恋人(村上春樹著)』に、かの有名な宇宙船の名“スプートニク”は、ロシア語で“旅の道ずれ”の事なんだと書いてあった。すると、2人にとっては彼女たち(おばちゃんたち)が、この短い川旅での“スプートニク”だったということか。『スプートニクのおばちゃん』、もしくは、『スプートニクの熟女たち』…どうでもいいけど。

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このTourを予約した時には「ボート乗船時間は2時間。」と訊いていたのだが、実際には昼飯休憩前の“前半戦”だけでも予定の2時間をゆうに超えいていたと思う。途中、景色がしばし単調になり、静かでシンとした雰囲気が退屈に思えはじめてきた。大型の観光フェリーでこの川を下る場合、乗船時間は…確か、4~5時間だと言っていたハズ。最初は「どうせだったら、時間の長い方が桂林を堪能出来るんじゃないか。」と2人とも単純に思っていたのだが、こうして体験してみると「2時間前後で十分かも。」という気もしてくる。それは、今日の天気が曇りがちで肌寒い空気に長く晒されていたからかもしれないけど。

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大型フェリーに乗っていれば、デッキ席だけでなく暖房の効いた「室内」も用意されているわけだし、何より途中で『船内ランチ』が提供されるのである。暖かい船室からこの景色を眺めつつの中華料理…それはやっぱり、別の楽しさがあるんだろうなぁ。

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フェリーの船内ランチの事を想像してたら、次第に空腹感がハッキリとしてきた。そんな2人の気分を察してか、我らがBamboo Boatの方もとある岸辺で『ランチタイム』ということになった。かなり荒々しい造りの半屋外的中華食堂では、おかみが忙しそうにあちらへこちらへと走りまわっている。

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しかし、2人はこの『ランチタイム』の事を事前に知らされていなかった為、前日にスーパーで買っておいた“オヤツ一式”を持参しており、それによって“今日のランチ分の予算”は既に使ってしまっていた。とても辛く悲しかったけれど、食欲をそそる食堂からの“匂い”に背を向け、味気ない“オヤツの一部”を片手に川面の停泊船(Bamboo Boat)へと戻ることに。

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ここでオヤツが“一部だけ”なのは、来る途中に少しづつ食べてしまっていたから。残った『鶏の足(足先の部分のゼラチンをしゃぶる、中国的おつまみ)』だけでは空腹は収まらなかったけど、それでもここは、グッと我慢である。Tourが終われば、執着地点の『陽朔(ヤンショウ)』の町で美味しい夕飯が食えるはずだから…。

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旅も終盤、日本が近づくにつれ、予算も着実に苦しくなっているのである。…というか、予算がそういう状態だからこそ、日本に帰る決心に至ったわけで、ここから先の日々の食事情が萎んでいくのは“仕方のないこと”なのだ。…そう思ってはいても、美味しい中華料理の味を知ってしまった身体は、なかなかその現実を受け入れようとしない。目の前に、こんなに安くて美味い飯がゴロゴロしてるってのに、我慢をしなきゃならないなんて…。

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さて、辛い(!?)ランチタイムを終えると、Boat Tripもいよいよ後半戦へ。ここにきて風景の凄みは益々研ぎ澄まされ、目にも心にもグッと迫ってくる。ただ、写真を撮るとなると持っているカメラでは距離感が中途半端で、あまり迫力ある風景は撮れなかった。もちろん、腕の問題も“大”だろうけど、それにしても、それはホント、とても残念。

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だから、あとはもう、周囲に浮かぶ沢山のBamboo Boatと共にその風景の中を漂う素敵な時間を、身体で感じる事に専念。ときおりカメラを構えたりもしたが、その大部分は旅の写真ではなく、“記念写真”として。う~ん、やっぱりスゴイ風景だなぁ、桂林って。

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天気は最後まで曇りのままだったけど、それはそれでこの場所の水墨画的な雰囲気が良く強調されてたのかもしれない。雨は一度も降らなかったし。もちろん、また来れるチャンスがあったら天気の良い日にも是非見てみたいけど。

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…雨は降らなかったけど、最後、ボートを降りてみたら、荷物はビチョビチョに濡れてしまっていた。2人の気付かないところで、かなりの水(波)が床を濡らしていたらしい。Mの荷物なんて、中身の服類にまで浸水してる…あ~あぁ、まったく…。でも、Bamboo Boatはしっかり楽しかった。予算が少なめな人には、桂林を楽しむのにお薦めの手段だと思う。

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