「市場歩き。」
AM7:00に目を覚ました。朝の涼やかな空気の中、裏庭に出てヨガを始める。最初は少しヒンヤリと肌寒いくらいだが、身体を動かしている内、温まって来た身体が少しづつ汗ばんでくるのが分かる。目を閉じると、静かな空気の中に鳥の鳴き声だけが響いている。木から降りてきたリスが、目の前を横切ってまた別の木へと登っていった。南国の、自然の“濃密さ”がとても気持ちイイ…。
シャワーを浴びてチャイとビスケットの朝食を済ませると、水着とカメラだけを持って最寄りのバス停へと向かった。今日は、知人から勧められた“新たなビーチ”を訪ねてみる予定なのである。
数日前、2人が受け取ったメールの中に、そのビーチの名前が着されていた。
“Agonda Beach”。場所は、先日訪れたAnjuna(アンジュナ)Beachより、さらに南側であるらしい。正確な場所は記されていなかったが、「まぁ、とりあえずMapusaまで行けば、そこからバスが出てるんじゃないの?」…と、かなりアバウトな方針で家を出て来てしまったのだが、実はこれが“失敗”の始まりだったのである。
2人の滞在している村(Querim)から、ローカルバスで約1時間半。北部ゴアの各ビーチへ向かう人々が集まる“交通の要衝”であるMapusa(マプサ)の町のバスターミナルには、今日もたくさんの観光客やら地元民やらがひっきりなしに出入りしている。
「よしよし、ここまで来れば、あとは“Agonda”行きのバスを探すだけだね。」…なんて話しながら気楽な気分で数人のバス関係者に訪ねて廻ったのだが、それらのオヤジどもの口から出てくる返事が、この後2人を一気に混乱させることに…。
「まずはPanaji(パナジ)に行って、そこからMargaon(マルガオ)に出な。そしたら、マルガオで“Agonda行き”のバスが見つかるハズだよ。」
…これが、そのオヤジ達の発した“返事”だ。しかし、これは日帰り観光気分で出てきた2人にとってみれば、思いがけない程の長い旅程なのである。
もし、本当にその乗継をこなしていかなければならないのであれば、少なくとも今いるこのMapusaから目的のビーチまで、さらに2時間以上は掛かるはずだろう。明日は2人がGoaを離れる「旅立ちの日」だから、今日の外出は「日帰り」でないとどうにもならない。が、今日中にQuerimまで帰らなきゃならないとなると…感覚的には、「向うに着いたら、そのバスですぐ引き返してくる」くらいな時間割になってしまいそうだ。それじゃ、ただ身体が疲れるだけで、Goa最後の日を楽しむ余裕がなくなってしまうだろう。
「あ~ぁ、バカだねぇ、うちら。ちゃんと調べておけば、日帰りで来ようなんて、無謀な事は考えなかったのに…。」
今さら言っても仕方がない事を、お互いに何度も言い合うだけで、なかなか次の方針を考えようという気になれない。他に行きたいビーチもないし…。結局、「Agondaの次に興味のある場所」といったら、自分たちの住む村Querim(ケリム)なのである。
「…しょうがない、来た道をまた、そのまま戻るしかないか…。」
とはいえ、折角ここ(マプサ)まで来たのである。何もしないで帰るのもしゃくで、とりあえずバスターミナル裏手のマーケットを少しだけ冷やかしていくことにした。ついでに昼食も、この界隈で探したい。朝のビスケットはもう完全に消化されており、腹がグゥグゥと不満を漏らしているのが分かる。安食堂を探しつつ、露店の並ぶ狭い路地を、人ごみを分けながら歩きだした。
目当てのビーチに行けない事が分かった時は、「せっかく早起きしたのに…。」と、時間の無駄遣いを嘆いたものだが、いったん市場の中を歩きだすと、その活気にそそのかされて、心が一気に弾んでくる。
市場の喧噪を少しだけ歩いたところで、地元の人で賑わっていた「Hindu Hotel」という食堂に入った。アフリカのどこかでも「Hotel」という表示が食堂を表していたが、インドのこの辺りでもやはり、「Hotel」は食事処のことらしい。店のウェイターに奨められるまま、2人とも「フィッシュ・ターリー」を注文したが、確かになかなか美味しかった。魚もメシもお替り自由で、ボリューム的にも文句なし。胃袋の不平不満もおさまったようである。
それにしても、今日が日曜日なのが関係しているかどうか分からないが(ヒンドゥー教徒の人たちは金曜がお休みだけど、キリスト教徒の人たちは、やっぱり日曜休みだろうから…)、市場の活気はかなりのモノだった。売れらている新鮮な野菜や果物、肉や魚が、色トリドリに通りを埋め尽くす。ちなみにこれは、Mが一目惚れしていくつか購入した「野菜の種」。日本の園芸店で売ってる“ジャポ○カ学習帳みたいなダサい種袋”と違って、キチンと「デザインされている」のが、素晴らしい。絵のテイストや名前の字体も、1個1個少しずつ違っています。1袋10Rs(≒20円)なり。
最終的には、何も用事のなかったMapsa(マプサ)でかなり充実した時間を過ごし、昼過ぎにようやく「帰りのバス」に乗り込んだのでした。結果オーライ。どんな場所にも、楽しみはあるものですね。