「Cradle Mountain。」
翌日の朝、7時に起きて山へ向かった。キャンプサイトのすぐそばにある国立公園エントランスから、山を望める湖のほとりまで、車で約30くらいの道のりだ。
湖のほとりの駐車場に車を停めて、廻りをぐるっと見まわしてみる。朝が早い事もあるのだろう、周りにはまだ数台の車しか停まっていないようである。
静かな、本当に静かな大自然の真っただ中に、こんなふうに車で簡単にアクセスできてしまうって事に驚かされる。しかし、ここから目の前に見えるはずの巨大な切っ立った山の姿は、未だ深い霧の中に…。
それでも服を着こんで車を降り、かすかな望みを持って湖の周囲のトラックを歩き始めた。ここから少し湖を廻りこんだあたりが、絶景ポイントになっているらしいのだ。
数人の年配登山家たちの後ろについて、ゆっくり砂利道を歩き進めていく。すると、低い木々の向う側に小さなボート小屋の姿が見え始めたのである。あそこが、最初のポイントになるはずの場所である。
雰囲気のある、年代物のボート小屋の傍に陣取って、山にかかった霧というか、雲が晴れていくのを待つ2人。ここで雲が晴れてくれれば、ボート小屋と一緒に素敵な写真が撮れそうなんだけど。
結局そこでは“ラッキー”は訪れず。雲に隠れた山を思いながら、今度は別の見晴らしポイントへと歩き始めた。山そのものは見えていないものの、周囲の景色はやはり本当に素晴らしい。曇っていてもそうなんだから、晴れていたらまた別世界の魅力があるのだろう。
豊かな木々の連なる斜面の向う側は、低く垂れこめた雲に覆われてスゥーっと消えいっていくように見える。これはこれで、なかなか幻想的な世界だ。
目の前に見え始めた大きな岩というか、崖というか。上には、雲の中で向き合うカップルの姿が見えている。あそこが目指す次のポイントなのだろう。
さらに数分歩いたところで、岩の上へと到着した。今日の予定を考えると、ここにいられる時間もあと僅か。祈るような思いで、雲の行方を見守り続ける。すると…。
徐々に晴れ始めた空の向こう側に、念願のCradle Mt のギザギザとした峰のカタチが!!?完全ではないにしても、これならその全貌のほとんどが見えたといえるんじゃないだろうか。1夜過ごしてまで待ったかいがあったかな。良かった…。