02 March, 09

「通り過ぎていく街並。」

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出発のとき。
フライト予定時刻が夜中のAM2:00(2 / March / 2009)だから、宿のフロントにお願いし
てPM10:00過ぎにTAXIを手配してもらっていたのだが…。

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今まさに荷物を担いでロビーに降りようとしていた時に、フロントの兄ちゃんが階段を上がって2人の部屋までやってきた。
「今航空会社から電話があって、どうやら君たちのフライトが遅れているみたいだよ。」
さらに事情を尋ねると、
「フライト時刻はAM4:00に変更になったらしいから、その3時間前までに空港に行っていればオッケーってことだ。」
… AM4:00!??こうなると、今日の夜中というよりは“明日の朝”といった方がいい時間帯である。とはいえ3時間前に空港ってことは…宿を出るのは、12時過ぎか。
まぁ、これなら部屋を確保していたことが正解だったとは言えるけれども、かといって眠るような時間もないわけで…。まぁいいか、特に急ぐ旅路でもないし。
再び荷物を床に下ろし、ベッドの上でPCを開いてDVDのドラマ「おせん」を見始める。3週間弱という2人にしては長い時間を共にしてきたこのベッドとも、いよいよあと数時間でお別れだ。そう思って横になってみると、少し柔らかすぎるスプリングや高さの足りない枕なんかに対してもちょっぴり優しい気持ちで接する事ができる気がする。
そんな風にしてゆっくりとした2時間が過ぎるころ、時間を変更して手配してもらったTAXIがホテルの前へと横づけされた。
20分ほど前からロビーで待機していた2人は、それを見るなりフロントのお爺さん(夜中はフロント担当が変わる)に別れとお礼を告げ、小雨の降り続く夜の通りへと歩み出た。

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荷物を運び出し、特大のそれら2つをギュウギュウと後ろのトランクへと詰め込む。そして、2人が後部座席に並んで座ったのを確認すると、車はゆっくりと南へ、空港へと向けて走り始めたのである。
街灯に照らされたブエノスアイレスの古い街並みが、妙に2人の心の中へと染み入ってくるように感じられる。この町並みを通り抜けた先で、中南米で過ごした1年弱に及ぶ長かった旅路が、いよいよ幕を閉じようとしているのだ。それは、何となくうまく実感できるような気もするし、他方ではその“意味”がまだ分からないような気もする、何だかとても不思議で、そして寂しいような気分であった。

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なにせ、“長すぎる”くらいに長かった旅路である。こんな時期まで南米に滞在しているなんて、当初の予定からは全く考えてもいなかったことだ。実際、旅している自分たちにとったって、「やっぱり、長いよねぇ…」と思うところも無いでは、無かった。

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それなのに、いざその場所を離れる時が迫ってくると、何だかまだまだ足りなかったような気分が心の中に芽生えてくるのだから、全くここは、本当に不思議な魅力を持った土地であると思う。
やり残したことは、山ほどある。でも、やりたい事、行きたい所へは、最大限の努力をして“旅してきた”という自負もまた、確かにある。
今、2人が感じているような気分の中で1つの旅の区切りをつけられるというのは、多分、とっても幸せなことなんじゃないかなぁと、窓の外を通り過ぎていく風景を横目にしながら、そんなことをそれぞれ無言でぼんやりと考え続けていた。
中南米には、またいつか2人で戻ってきたいと思う。
それがどんな形で、いつの事になるかは、今はまだ分からないけれど…。
その時のことを想像してみると、何だか少し、寂しい気分が和らいだような気がした。

雨はまだ、高速道路を走りつづけるTAXIの窓の外で、細く悲しげに降り続いている。

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