「Observatory。」
桟橋を先端まで無事に歩き切り、その先にある海底観測所の内部へと潜入…。
その施設は年代物の桟橋とは違い、とてもしっかりとしたキレイな建物である。Blue系の色で塗られた外壁は、海の色に合わせたものだろう。周囲に打ちこまれた木の杭なんかも、全てエメラルドグリーンのペンキで塗られている。
観測所内部への入場はTour形式になっていて、十数人の参加者たちがガイドに連れられ数十分おきに入っていくようになっている。次の回のTour用チケットを持った人たちが周辺でウロウロとしているのを見ると、どうやらみな早く着き過ぎてしまって、時間待ちの状態であるらしい。後ろを振り返れば、歩いてきた1.8kmの長さの桟橋がキレイすぎる海の上に頼りなさげに浮かんでいる。その橋が延びる先に見える陸地は、思った以上にはるか遠くへと離れてしまったようだ。
気がつけば、いつの間にかこんなところまで来ていたんだなぁ…。そう思ってしまってから、ふと不思議な感覚にとらわれた。同じような言葉、どこかで聞いたことがあるような…。そうか、とすぐに思い当たる。それは、自分たちの旅の途中、行きつく先の様々な土地やそこに住む人々を眺めながら、度々出会ってきた“感情”なのであった。
この旅では本当に、思いもよらないくらいに遠く感じる様々な土地へ、偶然ともいえるような旅路を経ながら足を踏み入れてきたのである。あの“距離”を桟橋に例えるならば、陸地からはいったいどのくらい離れていたのだろう…。
時間通りに“2人の回”のTourが開始された。ガイドにくっついて建物中央にある螺旋階段を下へと降りていくと、外壁に時折設置された極厚の透明ガラスを通して海底の様子を窺い見る事が出来るようになっている。それにしても…回遊している魚のあまりの多さに、2人ともいきなりビックリしてしまった。
無数の魚たちの群れが当り前のように、窓の外の“切り取られた海”を横切って行く。
建物を支える水中の柱には色とりどりのサンゴが踊り、その周辺には小さな熱帯魚たちの姿も見える。いや、小さなものばかりじゃない。海底付近を優雅に泳ぐエンジェルフィッシュなんかは、かなり立派な大きさである。
1つ1つの窓自体はそれほど大きなものではなく、1つの窓に数人も集まれば後から来た人は後ろで待っているしかない。でも、窓は円形の空間を囲むようにいくつも並んで設置されているから、窮屈な感じは全くなかった。
窓によって見える魚や珊瑚も違い、そのバリエーションがまた面白い。魚は自然に集まっているはずだが、実際こんなに様々な種類がいるものなのか…。じっと見ていると時折不思議なカタチ(又は色)をした魚が左から右へと通り過ぎて行ったりして、「おっ!!」なんて声を出してしまったり(笑)。運が良ければ、マンタなんかも見れるみたいだが、残念ながら今日は姿を現してくれませんでした…。