06 February, 09

「Salami。」

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バスの停留所の目の前にあるHotelの、4つのベッドが置かれたドミトリー部屋で目覚める。

正確にいえば、このHotelが停留所の目の前なのではなく、バスがこのHotelの前で発着するようになっている、というこであり、だから、朝になってHotelの入り口をくぐり抜ければ、そこに目当てのバスが待機しているのである。

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Desayuno(デサユノ:朝ごはんの意)はホテル付属のレストランで注文する事も可能だったけど、節約のため、オレンジジュース1杯だけで済ませる事にした。
あとは、手持ちのお菓子やらをかじっていれば、それなりにお腹はふくれてくる。
時間ギリギリにバスへと移動し、荷物を預けて、乗車席の方へ。車体は昨日のバスよりかなり新しく、座席も幾分「座り心地」が良さそうだ。
そういえば、添乗員も“新しく”なった。昨日の無愛想なアジア民族風中肉中背色黒男とはうってかわって、今日のお伴は“好青年風ヨーロピアン系イケメン若者”である。
昨日と今日では乗車時間もチケットの値段も全く同じはずなのだが、こういう乗車環境の違いから、幾分旅のグレードが上がったように感じる。荒涼とした何もない世界であったパタゴニアから、北部の文化圏へと移動してきたことによるのだろうか…。

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空には、鼠色のモコモコとした雲が、卵のボール紙ケースのような姿をして広がっている。
そんな空を眺めながら、好青年風添乗員の英語によるガイドを何となく流し聞いて、またまた動き出したバスの揺れに心地よさを感じていた。
AM10:00、小さな町の、新しめなガソリンスタンドでバスは停車した。「珈琲タイムだ。」といっていたから、スタンドの売店で素直にコーヒーを1杯注文して、2人で一緒に飲むことに。オヤツのチョコとキャラメルも購入。コーヒーが、思いのほか美味い。
“好青年”の説明によれば、ここはパタゴニアの中の「羊毛産業の中心地」であるらしく、先月にはそれにちなんだ毎年恒例のお祭りが行われていたらしい。確かにこの町に入ってくるとき、その入口に“羊刈りをする男”の銅像が建っていたから「そうなんだろうなぁ」と納得はしたけど、こうして町の真ん中で休憩している分には、その羊たちの気配を感じることはなかった。見た目は普通の、どこにでもあるような小さな町、だ。さっき聞いた名前すら、その場でいつの間にか忘れてしまった。

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20分後に、バスは北へ向かって再出発した。相変わらず雲の多い天気だけれど、向こうの空には大きく晴れた青空も見え始めている…。
こうして、パタゴニアの大地をバスに乗って移動していると、その空と空間の広がりというか、だだっ広さにいつも驚かされるのだが、あまりに遠くまで空が見えてしまっているから、「1つの視野の中に沢山の天気が見えている」という状況に、時として遭遇する事になる。つまり、今でいえば、現時点で自分たちのバスの上空に広がっているのは、どうみたってどんよりとした“曇り空”であるのだけれど、さらに遠い空と大地の方に目を向ければ、そこにはよく晴れ渡った空と、光に満ちた大地の色があったりするのである。

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もしバスがそちらの方向に向かっていれば、数十分か数時間後には自分たちの上に「晴れ」の天気がやってくるし、雨が降っているように見える方角に進んでいけば、やはり数時間後に雨に遭遇する事になるということで、近々の天気を予報するのがこれ程簡単な場所はないであろう。ちなみに今日は、進行方向に晴れ間が広がっているようだから、天気については心配なさそうだ(笑)。
昼飯時間には、やはりこじんまりとした町のガソリンスタンドでバスが停車。そこからみな好きなように散って、思い思いの食料を調達しに出掛けていく。2人も少し離れた雑貨屋の様なお店に入り、手持ちのパンに合わせるべく、サラミを1本購入する事にした。

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「あの、サラミって、置いてますか?」
何となく適当なスペイン語でそんな事を尋ねてみると、
「あぁ、サラミシートな、あるある、あるよ!」
と、調子の良さそうな店のオヤジが返事を返していた。しかし…“サラミシート”!?

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スペイン語圏の国々では、単語の語尾を変化させて、その言葉に新愛を込めるやり方がよく使われる。例えば、「ボルサ(袋)」は「ボリシータ」だし、「1ペソ(お金)」なら「1ぺシート」となるわけだ。とはいえ、今回の場合は、“サラミシート”なのである。
サラミの単語に“シ”なんてついてないし、いや、っていうか、“サラミ”だけの方が短くて、全然“言いやすい”し…!??
しかしその後もこのオヤジは、次々と画期的な単語を披露してくれたのである。
「そうしたら、パンシートはどうだ、パンシートは。これも美味いぞ。」
パンも、パンだけで十分だと思うけど…。“パンシート”って、サラミと同じで結局何の変化にもなってないじゃないですか!?
…このやり取りで分かったのだが、語尾が変形しにくいものには「シート」を付けて愛称とするようである、この国の人たちは。そう思って聞いていると、そういう言葉を言っている人が結構いるようなのである。う~ん、いやいや、1つ勉強になりました。
バスはその後も順調に、ガタゴト砂利道の続くRuta40をゆっくりゆっくりと北上していき、日が沈み始めたPM9:00を過ぎた頃になってようやくBariloche(バリロチェ)の町へと到着した。到着間際、左手に見える湖の向こうに沈む夕日がとてもキレイで、その湖畔に広がるバリロチェの町が、何だかとても神秘的なものに映った。
パタゴニア南部の大平原地帯とはまた別の、深い森林に覆われた山々、そして、澄んだ水を湛える湖の美しさに目を奪われる。この周辺にも多くの素晴らしいトレッキングルートがあるのだと聞いているから、そんな自然の中を歩くのが今からとても楽しみだ。
でもまぁ、今日はもう遅いから、動きだすのは明日だね…。

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