05 February, 09

「夕焼け色。」

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宿の目の前にある“バス乗り場”の方をロビーの窓から覗いてみたが、2人が乗る予定のバスはまだ到着していないようだ。

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荷物の用意を全て済ますと、ダイニングのテーブルに座って昨日買っておいたパンを食べる。お気に入りの“カップ入りクリームチーズ”に付けるとそれだけでかなり美味くて、2人ともあっという間に平らげてしまった。
夏とはいえ、パタゴニアの朝は常にヒンヤリと肌寒く、暖かいコーヒーが良く似合うし、それがとても美味しく感じられる。暖房のきいていない“ヒンヤリ”な室内でカップ1杯のネスカフェをゆっくりと飲み終えた後、もう一度窓の外を確認してみると、多分あれだろうと思われるバスが1台、“乗り場”の隅に停まっているのが見えた。
荷物を背負い、宿のオーナーにお礼と別れを告げて、外へ出るとお向かいにあるその“乗り場”へと向かう2人。
今回、ここEl Chalten(チャルテン)からBariloche(バリロチェ)までのバス移動は、アルゼンチン内陸部を南北に貫くHistoric Road「Ruta 40」を行くことになる。
若き日のチェ・ゲバラもバイクに乗って旅したというこの道を、2人の乗るバスは途中数箇所で小ストップしながら、2日の日程で目的地「Bariloche」まで走り切る予定だ。
今夜は、道程のほぼ中間に位置する町「Perito Moreno」で1泊することになっていて、宿についてはバスのチケットと一緒に手配済みだから現地で探したりする必要はない。
ただ、食事については3食全て自分たちで賄う事になっているから、安く上げようと思ったら、スーパーなどであらかじめ“食い物”を買っておく必要がある。食事時にはそれなりの場所で“休憩”があるとはいえ、その場で食料を調達すると、やはりそれはそれなりに“お高い”ことになっているのである。

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それにしても…今日の天気は昨日までとは少し違っていて、さっきまで晴れていたかと思ったら数分後には曇り空…しまいには雨が降り出したかと思うと、次の瞬間にはまた晴れ間が顔をのぞかせるという…つまりは、ある意味で非常にパタゴニアらしい天気であるといえそうである。
最初は、この前カラファテからチャルテンに来た時と同じ道を逆走するかたちでRuta 40とぶつかる地点まで走り続け、Ruta40にぶつかった地点でカラファテからの別の客を待って、そいつらを乗せた後に再び北へと走り始める…そういう今日の筋書きが、バスの“添乗員”から伝えられていた。
しかし、いざそのRuta40に到着して追加の客を待ち始めると、なんとどうもこのバス自体が「故障しているらしい」ということが判明し、結局“追加の客”だけじゃなくて乗り換え用の“追加のバス“もその場で待たなければならなくなってしまったのだ。

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全ての乗客の全荷物を一旦その場の路肩に下ろし、新しいバスが来るのをひたすら、待つ。
20分、いや、30分以上その場でじっと待っていただろうか…。カラファテから来た同じ会社の“El Chalten行き”バスが傍に停まり、中から“追加の乗客”が降りてくると、その後双方のバス運転手がなにやら密談のような事を始め、結局、その“チャルテン行きバス”が、2人の乗る“Ruta40バス”に変身する事に決まったようである。
“チャルテン行きバス”の乗客と荷物もその場で全て路肩に降ろされ、それが故障したこちらのバスへと詰込まれる。故障しているとはいえ、とりあえずEl Chaltenまでなら走る事が出来るのだろう。
そしてその後に、今度はこちらの荷物と乗客が、あちらのバスの中へと収まっていく…。
何だかえらく時間をロスしたが、これでようやく、再出発の用意が整ったわけである。

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新たなバスは内部の仕様が少し古臭くなった気もするが、とりあえず安心感のあるスムーズな動きでゆっくりと北の方角へ向かい始めた。
窓の外の天気は相変わらず、晴れたり曇ったりを繰り返していて、晴れれば暑いし、曇れば寒いし、なんとも忙しい感じである。
最初は良く舗装されていた道も次第にゴツゴツとした凸凹砂利道に変化していって、
「本当にこれが、観光的にも有名な、あの“Ruta40”なんだろうか…。」
と、思わず疑念を抱いてしまうほどだ。これはもう、数十年前にチェ・ゲバラが通った時と、全く状態は変わっていないんじゃないだろうか…。

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どこまでもだだっ広いパタゴニアの大自然の中、まっすぐに続く未舗装の砂利道を行く大型観光バスの存在は、相対的に見ると本当に“ちっぽけな”もので、そのことをふと想像してみると、胸の中に妙な不安感が芽生えてくるような気がする。
全く、どこから見てもこのパタゴニアというところは、何もかもが本当に、大きすぎるくらいに大きいのである。空も、大地も、雲も、全部、だ。
夕方、うたた寝から目を覚ましてバスの左側の空をみると、大きな雲の下のまっすぐな地平線の彼方に、黄色い夕日がまさに沈んでいくところであった。

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反対側の“右側”の空はその夕日に照らされて、鮮やかな暖色系のグラデーションに色づいている。大地も同じように色付き、なんと、その大地の真ん中からは、大きな虹が大空に向かって伸びていっているである。最初は1本だった虹が見ている傍から2本、3本と増えていって、最後には遂に、4本の虹が同じ空の上に…!!
2本の虹を同時に見たら幸せになれるという話があるらしいが、4本もみちゃったら、これは一体どういう事になってしまうんだろう…。
みんなその美しさに見入っていて、ハっと気がついて数人が一斉にカメラを向けるのだが、動くバスの窓の内側から淡い虹の光をとらえるのは難しく、うまくは写ってくれないみたいだ。こういうのは、目で見て、心に焼き付けるしかないのだろう。
それにしても…すごいなぁ…。

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