14 February, 09

「今宵、タンゴと共に。」

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アルゼンチンに入国して以来、初めてとなる本格的なTANGO(タンゴ)鑑賞。

昨日の日中にFlorida通りを歩いていた際、とある格安チケットショップに立ち寄った。
この店でタンゴショーのチケットを買うと、会場窓口で売っている料金よりも格段に安く手に入れる事ができるときいてはいたのだが、いや、これは確かに安い。通常270~300ペソはするようなチケットが、100ペソ以上安い値段で手に入ってしまうのである。
ただ、この店の住所まではしっかりと記憶してきていたのだが、いざチケットを買う段になって、「どのSHOWがお薦め」だったかということを覚えていない事に気が付いたのだ。いや、覚えてきたはずだったんだけど、2人ともその名前が完全に頭から飛んでしまったのである。店主に聞けば分かるかなとも考えていたのだけれど、店の入り口には沢山の劇場のパンフレットが貼られており、店主も別に“特定のSHOW”を勧めてきたりはしないのである。見た目にはどれも魅力的な雰囲気に見えるし…。
出直そうか…とも考えたのだが、何だかそれも億劫になって、
「いいや、どれでもひとつ、ピンと来たやつを買っちゃおうよ、ここで!」という、結局はいつも通りの“勢い重視”の作戦に出た。
そして、購入したチケットを持って宿の部屋へと戻り、お勧めされていたショーの名前と照らし合わせてみると…これが、まんまと違っていたのである(笑)。
でも、これはこれで、仕方がないことだ。自分たちの意志で、勢いに任せて買っちゃったんだから。そうはいってもどのショーも“悪い”ということではないだろうし、楽しんじゃうしかないでしょう、あとは、もう。

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そんな経緯で訪れることになったのが、この劇場「Piazzolla Tango」である。
モダン・タンゴ界の巨匠、バンドネオン奏者である故“Astor Piazzolla”の名を冠したこの劇場はCentral Buenos Aires:Florida通りの片隅にあり、レトロなアーケードの中にある入口をくぐって奥へと進んでいくと、この前の「世界で2番目に美しい本屋」に使われていたような、クラシックな劇場が目の前に姿を現す。内部を眺めまわしてみると、どうも他には客の姿が見えないようだ…もしかして、1番乗り!?
驚きつつも、「今のうちに写真撮っちゃおうか。」なんて話していた矢先に、すぐ後ろから続々と他のお客さんたちが入ってきてしまったのでした。う~ん、残念、誰もいない劇場を撮影するチャンスだったんだけどなぁ。

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整然と並べられたテーブル席のひとつに案内され、まずは早速Vino Tinto(赤ワイン)を注文する。因みに、今回のチケットにはディナーやドリンクなどが全て含まれており、込み込み価格で180ペソ/1人(≒4680円)。劇場入口のチケット売場では「280ペソ」となっていたから、やはり“あのチケット売場”は相当に格安だったようである。
時刻は、現在PM8:30。Tango Showの開演時刻がPM10:00となっているから、それまではまず、素敵な“劇場レストラン”にて、ディナーをゆっくりと楽しむことに。
Dinnerは、前菜・メイン・デザートの3品からなるコースになっていて、それぞれに何種類かあるMenuの中から食べたい物を選ぶことが出来る。別のテーブルに運ばれて行く料理を見ているとどれもとっても美味そうで、どうにもなかなか選べないくらいである。
それでもようやくそれぞれ好きなMenuを選ぶと、あっという間にまずは前菜から、見た目にも素敵な料理たちが運ばれてきた。

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このころになると周囲の座席も8割がた埋まってきていて、それぞれテーブル席から楽しげな声が聞こえてきている。Jの後ろの方のテーブルには中国人の団体客なんかもいて、そっちの方を向いて座っているMは、外国にいながらにして、目の前に広がる何だか見慣れたような風景にちょっと不思議な気持ちになっていたみたい(笑)。
それにしても、料理がどれも、期待通りになかなか美味しい。ワインの酔いも気持ち良くまわってきていて、これから始まる「Tango」への期待に、自然と2人の会話も弾んでくる。

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あっという間にデザートまで平らげ、食後のコーヒーを飲みながら馬鹿話をして笑いあっていたところ…ついに、会場の照明が落ち、ステージの幕が上がったのである。
妖艶な色彩のライティングを浴びたダンサーたちが舞台の中央でダイナミックに舞い、その後ろからは、ピアノ・バンドネオン・バイオリン・コントラバス・ギター奏者たちによる生演奏の重厚な音楽が会場中に響き渡る。その迫力は圧倒的で、出だしの時点でもう、いきなり度肝を抜かれるような思いがした。これが、“アルゼンチンTango”ってわけか…。
実はこのShow、「写真撮影はダメよ」ということになっていて、ここにある1枚の写真については、Jが一度だけ、隠れてこっそり撮影したのものである。

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最初は「こんなに素敵なショーを写真に撮れないなんて…」とか思ったけど、見ている内に、もしかしたら、確かにその方がいいのかもしれない…と、考えを改める気持ちになった。元々の理由は劇場側の都合かもしれないが、見る側について考えてみても、常にカメラに気をとられるより、目の前の舞台だけに集中できた方が“Tango”っていうものをより体中で感じる事が出来るような気がしたのである。
途中からはもう、写真の事なんか完全に忘れてしまっていて、ただ目の前の舞台の上を一瞬だって逃すまいと食い入るように眺め続けていた。
そうして、2時間弱の素晴らしいショーが、大喝采の中で幕を閉じた。
ざわめきの中で皆が席を立ち始めたところで、思いだしたように2人で記念撮影を、1枚。

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会場を出ると、劇場ロビーに飾られているバンドネオンを眺めたり、売店で売られているAstor PiazzollaのCDを物色したりしながらも、実際のところは、頭の中に鳴り響くTangoのリズムにいつまでも酔いしれていた。
そうして少し落ち着いてきたところですぐ外のFlorida通りへと出ると、夏の夜特有のなつかしいような匂いが柔らかい風の中に混じっていたような気がした。
あんなに激しく劇的なショーを見た後に、こんなに優しい気持ちになれるっていうのも何だか不思議なもんだ。Tangoの哀愁漂うリズムや踊りが、心の中にあるこういう気持ちを引き出させるのか…。
そういえば、帰り際に通りを宿へと歩いていたら、真横になんと、さっきまで舞台で踊っていた演者たちの「若手集団」が歩いている事に気が付いた。こんなチャンスは滅多にないと、勇気を出して声を掛けた「写真、一緒にとってもらえますか…。」
みな気持ち良くポーズをとってくれたから、その中で楽しげに立つ、笑顔のMを1枚。
こうしてみると思った以上にみんな若くって、ちょっとビックリしてしまった。舞台をおりたら、普通すぎるくらい普通の若者たちだなぁ、みんな(笑)。

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最後に、こんなにも良心的価格のチケット売り場を教えてくれた林夫妻、本当にどうもありがとうございました(笑)。

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