01 February, 09

「かお。」

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AM8:00。昨日と同じような時間帯に、同じような“冷たい空気”を感じて目覚めた。
外は、曇りとも晴れともつかないようなちょっと微妙な天気だが、とりあえずFitz Roy(フィッツロイ山)は今日もしっかりとその姿を見せてくれているようだ。

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ここでのキャンプ生活も、短いながらも今日で最後。これからいよいよ“下山”である。
2泊3日という日程で今回この場所に臨んだわけだが、こうして最終日を迎えて思うのは、これってどうもやはり、日本人にはお馴染み、かつ、ちょうど良いと感じる日程だなぁ、ということ。疲れも“そこそこ”でいて満足感もあり、何となくもう少しここにいたいと思うような、ちょっと後ろ髪をひかれる感じもある。“冒険”的な視点で言えば、物足りないというところもあるには、あるけど…。
とにかく、今日は町に帰る日だ。
朝ごはんを食べた後、荷物をまとめてテントもたたみ、バッグを背負うと早々に「El Chalten(町の方)」に向けて出発した。

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東の方角を見渡してみるとグレーの雲に覆われた空があり、今にも雨が降り出しそうな、辺りにはそんな気配まで漂っている気がするのだけれど、ふと振り返って西に向き直ると、そこにはもう、どこまでも青く晴れ渡った突き抜けるような空の色が…。白く浮かんだフィッツロイ山とその周囲の山なみも、今日もまた非常に美しい限りである。
そんな2つの真反対な風景を頭の後ろの方に置き去りにして、2人は南へと帰る道をゆっくり、軽やかに歩きだした。

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まもなくすると、草原の真ん中に“分かれ道”が現れた。
ここを左に進んでいけば、それは2日前に出てきたEl Chalten(チャルテン)の町に続いており、右に進路をとったとすれば、その道はそのまま昨日行けなかった「Torre湖」の方へと続いて行くことになっているのである。
さて、これは、どうしようか…。
時間はまだまだ午前中であり、片道3時間のTorre湖まで今ここからトレッキングしても、夕方には十分に町へとたどり着くことが出来るだろう。
Torre方面の風景も非常にキレイであるらしいし、行った方がいいんだろうねぇ、やっぱり。
…そう思う心は、2人とも胸の中にしっかりと持ち合せていたのだけれど、結局“脚”は左手の町方面へと進み始めてしまったのであった。
いつもなら、行けるところは全て行きたいという心の方が強いはずなのに、今回ばかりはどうにも身体がそれについていかなかったのである。…いや、肉体的には2人ともまだ行けば行けたと思うのだが、これは結局、心の問題か…。移動続き、歩きどおしな生活の中で、身体よりもまず、精神的に疲れがたまってしまっていたのかもしれない。
そこにきて、昨日・一昨日で見る事が出来た「Fitz Roy」のとんでもなく素晴らしい風景。そこから得た満足感もまた、2人の気持ちを“緩める”原因になったのであろう。

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とにかく今日は早めに宿に帰って、少しゆっくりしようよ、ねぇ…。
なだらかに続く草原の中の畦道を、「まだ見ぬ風景(Torre湖)」に惹かれつつも毅然とした足取りで宿へと向けて歩き始める2人。
すると、そんなちょっと弱気な気分で歩く2人の前方の草原地帯から、日本人らしき若者集団が歩いてくるのが目に入った。
お、なんだ、随分早い時間から町を出てきたんだなぁ。
そんな気分で彼らとすれ違い、「こんにちは~。」と挨拶を交わす。すると…。
最後に挨拶をした2人の“女子”が、どうもこちらを見ているような“気配”というか、視線が、頭の後ろから感じられるのである。
「何かあるのかな!??」
もしかしたら、「カメラのシャッターを押してください」とか、そういう事を頼みたいのだろうか。確かにここは見晴らしのいい場所だし、広い草原の向こう側には綺麗にチャル様が見えているのだ。
ふと立ち止まり、そんな“女子”2人の方を何気なく振り返ってみると、向こうも何か意を決したようにこちらへ向って走り寄ってくるのが見えたのである。
いきおい、こちらも歩み寄るというか、小走りで彼女らに近づいて行くことに。
そして、頭の中に「?」を浮かべながらも向こうの出方を窺っていると、何とも思いもよらないような一言を投げかけられることになったのである。
「あの、もしかして、Blog(ブログ)とかやってますよね…?」

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突然のことに、すぐには言葉の意味が理解できなかったが、いや、それはたぶん、この“ブログ”のことであろうとすぐに気持ちを切り替えた。
「あっ、いえ…、いやっ、はい、やってます、ブログ…。」
ここでもまだ探りながらの返事をしてみると、その後今度は相手からこんなお言葉が…。
「いつも見せてもらっているんです、ブログ。あの、“顔だし”されてますよね、お2人…。」
顔出し!!?確かにしてます、顔だし。いや、まさかこんな所で自分たちのブログを見ている人に出会う事になるなんて、全く想像していなかったから、すごく嬉しくて、そしてとってもビックリしてしまった。
これまで、出会った人たちにブログを紹介して見てもらう事はあっても、逆にブログを見てくれている人に出会うという機会はなかったのである。
未知の方々とコメントを通して接する事はあるけれど、こうして実際にそんな人たちに直接出会うというのは初めて。何度もいうけど、これは妙に嬉しいもんです。
「写真、一緒に取りませんか…?」
そう言われて、何だか今考えると恥ずかしいくらいに2人とも浮足立った気分になりつつ、フィッツロイを望む素晴らしい“絶景”をバックにして、彼女らとそこで一緒に記念写真を撮る事になったのである。
それにしても、考えてみたらこっちは2泊3日の山生活を終えてきたところで、その間は風呂も入っていなかったということを思い出した。髪はゴワゴワ(Jは坊主だから関係ないけど)だし身体は垢だらけ。多少“臭い”も漂っていたかも…。別に気にする必要もないようなそんな自分たちの“身だしなみ”が、何だか急に気になってしまった(笑)。
あまりに浮足立ってしまって2人の名前すら聞かないまま別れてしまったけれど、お2人も今、まさに世界一周をしている最中だと言ってた。これから先、どこかで行先が「交わる」ことがあるのか、ないのか、分からないけれど…お互い身体に気をつけながら、引き続き素敵な旅を続けていきましょう!!…と、この場を使って呼びかけを、ひとつ。

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さてさて、その後の“帰り道”は行きにも増して穏やかな道程で、空も昨日と同じように、午後に入ると時間を追う毎にどんどんと真っ青になっていった。
木々の緑が目に気持ちイイ。風はなく、日差しは徐々に強さを増していて、行きにはちょうど良いピクニックエリアだった岩場の辺りも暑くて座っていられない状態だ。
いくつかのMirador(展望スポット)を通り過ぎながらたくさんのトレック客とすれ違い、ゆっくり、確実に前へと進み続ける。

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目の前にそびえる大きな岩山の頂上付近には、2匹のコンドルが気持ち良さそうに飛翔しているのが見える。ほとんど羽ばたく事をしない彼らの飛び方は、見ているこちらにとっても、何ともいえない気持ち良さがある。
歩き始めて、3時間半後。最後の森を抜けた2人は、2日前に出発したのと同じ「トレックルート入口」へと到着した。傍らには管理小屋とでもいうような、黄色い屋根の平屋が見えている。小さな草花に囲まれたこの小屋の佇まいが、何だか妙に懐かしく感じられる。ここでも空はどこまでも青くて大きく、白く浮かんだ雲が心地よい。とにかく最後まで、常に気持ちの良い「晴れ」の中で無事にゴールへとたどり着くことが出来たのであった。

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