30 January, 09

「山へ行こう。」

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El Chaltenの町に来て、2日目の朝。
8時のアラームで目を覚ますと、窓の外には真っ青な空が広がっていた。

昨日の雨雲は、一体どこにいってしまったのか…不安に思っていたのが馬鹿みたいに、何とも思い切りの良い晴れ方をしている(笑)。
雨だったら出発を延期しようかとも思っていたが、予定通りに荷物をまとめると、町のはずれの登山口付近にある“レンタル登山用品屋”へと向かった。
店は、AM10::00に開店なのだが、待ちきれずに早めに宿を出てしまったため、店の前でしばらく待たされることに。こっち(南米)の人が、2人の期待している“10分前行動”みたいなことをしてくれたりするはずもなく、結局10:00を10分ほど廻ってからようやく1人の店員がやってきた。開店と共に、2人も店の中へと入っていく。
借りるのは、テントと寝袋とマット、それに鍋セットか。
ガスバーナーは、実はカラファテで安いやつを1つ購入したので、今回はそれを持参してきた。食料品も昨日の内に購入してあるし、準備万端。いよいよ、“山”へと出発である。

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今回キャンプをするフィッツロイ山の麓のキャンプ場は、テントを張るのに料金がかかったりはしない。因みに、ここもやはり先日氷河トレッキングをした「Parque Nacional Los Glaciares(氷河国立公園)」に含まれるトレックルートなのであるが、Perito Moreno氷河を見に行った時とは違って、ここでは「国立公園入場料」的なものが一切かからないことになっている。…つまり、自分で歩きまわる限りは、全てを無料で楽しむことが出来るという、とても良心的な場所なのである。
入場料がかからないだけに公園管理費もそれ程豊富なわけではないから、訪問する観光客1人1人の園内での行いがとても重要になってくる。
「山中で出たゴミは全て自分で町まで持ち帰ること。」
「公園内の川の中で、食器を洗わない事。洗う時は、水を汲んで最低30歩は川から離れる。」
「ここにない動植物を公園内に持ち込まない。果物のカスも、その場に置いてこない。」
「キャンプサイトでは、夜にやたらと騒いだりしない。焚き火は厳禁。」
などなど、基本的な諸注意を個人個人が守って行動するべし、というわけだ。

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しかし、この自然を見せられたら、そんな注意を聞かなくたって“自分たちで守っていきたい”と思わせられてしまうのじゃないだろうか。特に今日の、この晴れ渡った空の下では、緑の木々や咲き乱れる花のやわらかい色が2人の心に深く、優しく染み入ってくる。
町のはずれの登山口から“よく整備された”きれいな山道を歩き始めると、この、周囲の景色の見事さに、2人ともあっという間に心を奪われてしまった。
日差しが強く、長袖のT-shirtを来ていると、脇のあたりから汗ばんでくるのを感じる。
しかし、時折吹きぬける風は何ともちょうど良い“涼しさ”で、だから多少汗をかいてもそれ程ベタベタと気持ちが悪い感じになったりはしない。アンデス山脈を挟んで“海側”と“陸側”の違いはあるのだろうが、こういう所はパイネの気候と似た空気を感じる。

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山道の最初は多少登りが続く道則になっていて、重い荷物を担いでいると少し息が切れてきたりもするが、パッと景色が拓けたときの、眺望というか、目の前に展開する“世界”といったらもう、それは本当に気持ちが良いものなのである。
Fitz Roy山を見ることだけが、この場所の魅力ではないと思う。この、そこへと続いていく道程そのものが、とても素敵だなぁって思える。
そんな山道を歩きながら、まず最初に2人が目指したのは、キャンプサイトまでの道程のちょうど中間あたりにある「Lago Capri(カプリ湖)」湖畔の展望スポットだ。

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…と、その道の途中に、前から山を降りてくる1組の日本人カップル(たぶん夫婦)と遭遇。挨拶の声を掛け合うと、男性の方から
「今日はもう、最高の天気だよ!もうすぐそこから“チャル様”バッチリ見えてるから!」
という、とても素晴らしい情報を頂いた。
因みにここで彼がいうところの“チャル様”とは、フィッツロイ山のことであるだろう。
Fitz Royというのは外国人入植後に付けられた名であって、先住民たちはこの山を「El Chaltenエル チャルテン(煙を吐く山)」と呼んでいたらしいのである。
とにかく、そんな彼らの言葉に励まされて、2人は急ぎ足で湖へと向かった。

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天気が良い日には、ここで「湖に影を落とす美しいFitz Roy山系」が一望にできるとガイドブックに書かれていたのだが、いざその湖畔へと到着してみると、目当ての“チャル様”の頂は、まっ白い雲に隠されてしまっているではないか。雲は徐々に動いているから、もうしばらくしたらチャル様もきっと、その姿を見せてくれるのだろうけど…。
それにしても、確かにこうして雲塊を従えたフィッツロイ山の姿というのは、その山頂が煙を吐いている様にも見える。なるほど、これが「El Chalten」か…そんな事を思いながら、2人はこの湖畔を後にして更に奥へと進んでいった。
そして、そこから30分も歩いただろうか…山道が再びひらけたとき、2人の目の前には、完全にその姿を現した「El Chalten(Fitz Roy)」の威容がそびえ立っていたのである。

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雪と氷河に覆われた、白い山肌の独特なフォルムに圧倒される。
この場所にはちょうど良い具合に太陽の光がさしているためか、多くのトレッカーたちが次々に来ては辺りの岩に腰を下ろし、この見事なチャル様の姿を思い思いに眺めているよだ。そんな彼らの姿がまた、大自然の中での気持ちの良いひと時を表現している。
2人も空いている岩の上で背負っている荷物を下ろし、お菓子を出して“Coffee Break”を。
しかし、それにしても、こうして目的の山を実際に目にして思うのは「やっぱり、世界中の登山家や旅行者がこぞって目指すだけの山だなぁ、これは。」ということである。

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山頂付近には絶えず雲が近づいては離れていき、山は1瞬1瞬にその姿を変えている。どれだけ見ていても、全く飽きる事がない。このままいくらでも眺め続けていられそうだ。
それでも、ここはまだ、今回の2人にとってはあくまで「通過点」でしかないのである。
この先の、キャンプサイトの更に奥には、もっと素晴らしい“展望エリア”が待ち受けているという…。とにかくまずは、この背中の荷物をキャンプサイトまで運んで、自分たちの“基地”となる場所を造ってしまいたい。日が長いとはいえ、夕方には太陽が山の方向に沈み始めてしまう。完全に逆光となってしまうその前に、今回の目的地である展望エリア「Laguna Los Torres(ロス・トレス湖)」に到達したいし…。

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お菓子を片づけ、荷物を背負うと、再び見事な自然の中の素敵な山道へと戻った。
すれ違うトレッカーの中には、日本人の姿もちらほら。みな早朝に出発して、山を登ってきたのだろうか…自分たちも早く辿り着きたいと、気持ばかりが焦ってくる。
それでも、こうして歩いている間にさっきより益々 山の周囲の雲が晴れてきていて、どうもこれからロス・トレス湖を目指せば、一番良い状態で“チャル様”の姿を見れそうな気もするのである。焦らなくても、きっとこれで“ちょうど良い”のだ。

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澄んだ水の川を何度か渡り、いくつもの草原や林を通り抜けて、2人はようやくキャンプサイト「Poincenot(ポインセノット)」へと到着。町で借りてきたテントを組立て、荷物を
降ろして一息つく。
時刻は、午後の3時をまわろうとしている。ここから目的のLaguna(湖)までは、1時間くらいの道のりであるらしい。度重なるトレッキング生活が身体を鍛えてくれているから、体力はまだまだ十分。さて、それじゃぁ行きますかねぇ…。

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