明日1月11日は2人にとって大切な日なのだが、ちょうど日曜日ってこともあって、町のいくつかの素敵な店やレストランは“休業日”ということになってしまっているらしい…。

山から下りてきて宿に戻った時に女主人からそれを聞かされた2人は、とっておきの大作戦である「カニ食べてやるぞ作戦」を今日の内に実行してしまうことにしたのだ。
Ushuaiaはカニ料理が有名な土地で、セントージャと呼ばれるタラバガニに似たそのカニが今は“解禁”シーズンを迎えているのである。パタゴニア地方としては今がちょうど観光シーズン真っ盛りでもあるから、町にはセントージャ料理のメニューを出した観光客向けレストランが溢れかえっているのであるが…。
いったいこの沢山の店の中の、どのレストランで食べるのが一番おいしく「カニ」を楽しむ方法なのか…それを知るために、人柄も良くセンスも良さそうな宿の主人に訊ねてみたところ、教えてくれたのがこのレストラン「Tia Elvira」。

場所は町の東側、海辺の通りに面していて、看板に蟹のマークが出ていることからもカニ料理をメインとしていることが伺える。しかし、実際地図を見ながらこの店を教えてもらった時に2人が想像していたよりも、店の雰囲気が何だか少し“高級”な気もするなぁ…。
まぁでも、こういう日でもあるし、そんなことでせっかく教えてもらったこの店を諦めるのも違う気がする。値段的には、どの店で食べたってカニはどうやら高いものであるようだし…記念日、記念日！いっちゃいましょうよ、今日くらいは、ねぇ！？
…全然「今日くらい」ではないけれど、とにかくそんな風に無理やりにも勢いをつけて、2人の心に募る罪悪感を振り払いながら店の中へと突入していったのであった。
店内は良い感じに賑わいを見せていて、入口の扉を開けた時点からもう、とっても美味しそうな“何か”の匂いが漂っている。
楽しそうに食事を楽しむ他の客たちのテーブルを何気なくちらりと覗いてみると、やはりどの客のテーブルの上にも“カニ料理”らしきものが乗ってるようである。
2人も案内された店内奥側の2人掛けのテーブルに座ると、手渡されたメニューの内容をおもむろにチェックし始めた。…う～ん、やっぱりこの店、結構“良さめ”な店なんじゃないかなぁ…。カニ料理自体の値段というよりは、その他のサラダやらドリンクメニューの金額を見て、2人は瞬時にそう思った。ワインなんて、ブエノスアイレスで飲んでいた安ワインとは比べ物にならない値段である。いや、House Wineでさえも…！？？
ここで少しまた怖気づいたが、いやいや、もう一度気を取り直して、改めてその“メニュー”とその上で踊る“セントージャ”の文字に対峙する事にした。
ここで思ったのが、そういえば「何がお勧めメニューなのか」を聞かなかった、ということである。どれを頼めばよいのだろうか。仕方無くギャルソン風の店員に聞いてみるのだが、スペイン語が分かりにくくて、どうにも話がかみ合わない。というか、2人のスペイン語の語彙が少なすぎたっていうか…。
結局、メニューに書かれた内容の“美味しそうさ”を検討して、無難に美味いだろう「ガーリック風味」と「モッツァレラ仕込み」的なカニ料理をそれぞれに注文する事にした。

飲み物としては、“ビーグル”の名を冠したビールを注文。ワインは高すぎて結局手が出なかったです。…でも、このビールもなかなか美味しい。渋みが強くて、飲みごたえがある。
そんなビールをチビチビすすっていると…出てきました、大御所が、大本命が！！
Nice guys finish last。
そんな英語のいいまわしが、理由もなくふと頭をよぎった。
色々と迷ったけれど、最終的には素晴らしいカニ料理とご対面である。
匂いがもう、ヤバい、です。
見た目には、グラタンのような形の容器のなかに、もう、ギュウギュウにカニの身が詰まっている、という感じである。その合間をガーリックソースやモッツァレラソースが埋めていて、その絡み具合がもう、何ていうか…何とも言えません！？（笑）

一口食べるごとに、幸せが口の中に広がっていく気がする。美味い。こりゃ、美味いッス。
考えてみれば、Ushuaiaではまだ1/10だけど、日本時間で言えばもうとっくに1月11日になっている。
これはもう、確実に“今が記念日”ということが出来るるだろう。
2周年、おめでとう。これからも仲良く楽しく、素敵な人生を歩んで行こうね（笑）。
そんな2人の未来を目の前のカニ料理に誓い合いながら、今日という素敵な1日を最後まで素敵なままで締めくくる事が出来たのでした。