10 January, 09

「散歩道。」

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観光地化されたGlaciar Martialから降りてくると、リフト乗り場のある場所から町まで続く川沿いの山道を歩いて帰ろうということになった。

距離にして約7kmの道のりで、朝は“登り”だからちょっと億劫になってTAXI使ってしまったけれども、下りだったらそれもイイかなって。日が長いから今(2時くらい)からでも日暮れまでたっぷりと時間があるし、疲れたら途中で道路に出てバスに乗ってもいいだろう。とにかく今日は気持ちの良い天気なものだから、2人共もっと自然の中を歩いていたいって気持ちになってきたのである。

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リフト小屋の脇から木漏れ日の中の山道へと入ると、すぐのところにちょっと素敵なカフェ兼ホステルが建っていた。
傍らには大きなセントバーナードが寝転がっていて、そのあまりの巨大さに思わず驚きの声を上げてしまったくらいだ。犬もこんな天気だから、気持よく昼寝を楽しんでいたのかもしれない。起こしてしまってごめん、ゴメン(笑)。

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そこから奥へと進んでいくと、数十mいったところで不意に車道へと抜けてしまった。
ここは単なるホステルの裏庭であったみたいだ。車道に沿って坂を下ると、新たな川沿いの道への入り口が現れてきた。こっちこっち、こちらが本当の“山道”のスタート地点である。追い茂る草をかき分けてその細くて小さな入口を入っていくと、背の高い木々の中を抜けるようにして細いクネクネ道が下へと続いているのが見えた。氷河の山から流れてくる清流がそのすぐ脇を流れており、そこから聞こえてくる水音が耳に気持ちいい。

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木々の向こうには行きに通った車道が通っているはずだが、元々車の通りも少ないからだろうか、聴こえてくるのは川の流れる音と鳥の鳴き声くらいなもので、人工的な音は全く、どこからも聴こえてはこないようだ。周囲の空気はひんやりとしていて、それが上から降り注ぐ木漏れ日の暖かさと相まって心地よい環境を作り出している。いくら歩いても汗1つかかないし、かといって寒さを感じる事もない状態だ。

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風は、森の木々が遮ってくれているのだろうか。
前から通り過ぎていく人もほとんどいないし、後ろから来る人影も見えない。どこまでも静かで、どこまでも穏やかな雰囲気である。Ushuaiaの街を闊歩する沢山の観光客や、さっきのリフトから上に登っていく人々の数の多さやガヤガヤとした感じを考えると、この森の静寂には何だか不思議な感じもしてしまう。
“観光名所”から少し離れただけで、こんなにも素敵な森が広がっているってことに驚かされる。しかも、この道はそれでいてしっかりと手入れが行き届いているから、歩いていて不安を感じることは全くない。
それは「しっかりと整備されてしまっている」ということではなくて、人が穏やかに自然と触れ合える環境を作ってくれているという感じなのである。

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道はたまに泥道になったりもするし、倒れた木々が覆いかぶさっていたりもするのだけれど、そういう自然の荒れた姿を目にしながらも気持ち良く山歩きを楽しむことが出来る。
この森は、今まで歩いた森とくらべても、本当に素敵な雰囲気の森であると思う。
歩きながら、2人で何度もそういう話をしつづけていた。ここは、なんて気持ちのいい森なんだろう、って…。

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森の中には山の上とは違った種類のかわいらしい植物があちこちに生えていて、そういうのを見ながら写真を撮りつつ歩いて行くのもまた、やはり楽しいものである。

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道の途中で、“キッタリア”というキノコを発見した。
これは椎名誠さんの本の中にも出てきたから、Mがすぐにそれと判別することができた。
丸い柑橘系果物のような形をしたオレンジ色のキノコで、大きさは直径約1~3cmくらい。木の幹に“膝小僧”のような節をつくって、そこから大量に生えてきている。表面にプツプツと穴が開いていて、ブニョブニョした感触のそのキノコをギュッと押すと、その穴の中から何だか分からない汁が噴き出してくるのである。見ようによっては、ちょっと気持ちわるい…。けど、食べたらそれなりに美味しいみたいです。

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道は多少のアップダウンを繰り返しながらも常に川の近くを通って下へと伸びており、天気の良さもあってとにかく終始“気持ちがイイ”。
ゆっくりゆっくり時間をかけて自然を見ながらその道を下りていき、遂に森を抜けた時には時刻は4時を少し廻ったくらい。だいたい2時間くらい歩いていた事になるけど、そんなに歩いていたとは思えないくらい、あっという間に時間が過ぎてしまった感じがした。
正直、森を抜けた時には 「えっ、もう終わり?もっと歩いていたいのに…。」っていう気がしたくらいで、とにかく本当に、素晴らしく気持のよい散歩道に出会えたと思った。
もしここに住むような事があれば、週末ごとに歩いてもいいような道だと思う。

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森を抜けた先にはUshuaiaの町を見下ろす見晴らし台のよう広場があり、子供たちが自転車に乗ってその斜面を下ったりして遊んでいるのが見える。その脇では、Ushuaia名物でもないだろうが、町中でもやたらと見かける“野良犬”たちが、モノ欲しそうな眼でこちらをみていたりして…それを見て何だか、大自然の中から町へと戻って来たんだなって感じがした。そらはいまだ、真っ青に晴れ渡っている。今日もまた、本当に素敵な1日だったなぁ。

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