08 January, 09

「山の上の氷河。」

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キッチンに用意されたパンとコーヒーの簡単な朝食を済ませると、宿の前の通りに腰かけて、2人を迎えに来るはずのTour Busを待つ。
すると、予定時刻のAM9:00を10分ほど過ぎた頃に、小さな白いバンが姿を現した。

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中から出てきた若いガイドと挨拶を交わし、そのまま後部座席に乗り込む。いよいよ写真を見るからに楽しげな「氷河に潜り込もう」Tourへと出発である。
バンはその後もいくつかのHostelに寄り道をして他の参加者をピックアップしていき、最終的には2人を入れて合計6人 & ガイドのPauloという編成でTourをスタートすることとなった。何だか、ちょっとワクワクしてきた。人数が少なめなのも良い気がする。
ともあれ、まずはそのまま車に揺られて、途中で「本日の注意事項とタイムスケジュール」などを聞きながら移動すること30分程度。町から20kmほど離れた場所にあるトレッキングのスタート地点に到着すると、パウロ(ガイド)に急かされるがままに全員バンを降り、そこから道路脇に迫る森の中へと突入していく事になるのである。
スタート地点は、「えっ、ここなの!?」ていうくらいに周りに何もない道路脇で、森に入っていくや倒れた木々に行く手を妨害されたりしなが、それでもちょっとづつ前へ前へと進んでいくと、その途中からようやくここがトレッキングルートである事が分かってくる感じ。確かに前に誰かが歩いた痕跡があるけど、なかなかワイルドな通り道である。
そこからしばらくは、木々に囲まれた森の中の急斜面を上へと歩き続けるのだが、前夜に降った雨のせいで道がかなりぬかるんでおり、いつも普通の運動靴でこういうTourに参加している2人にとってはかなり歩き辛い状態であった。
油断していると深いぬかるみにズボリとハマり込んでしまうから、足元に最新の注意を払いながら、次の1歩を踏み出していく。それでもたまにズボっといってしまうし、他の参加者も足を取られて転んだりしていた。コケると身体まで泥だらけになるから、とにかく慎重に、慎重に…。最初はガイドのすぐ後ろを“先頭集団”として歩いていたけど、途中から意図的にゆっくりと歩いて後方に回る事にした。そうすれば、前方の人々の歩き方や“コケ方”で、ぬかるみ具合が分かるのである。ちょっとズルいけど、みんなが何だかやけに前へと行きたがるから(笑)。

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そうして1時間ほどそのぬかるんだ森の中を足元ばかり見ながら進んでいくと、ある時点から急にパっと視界が開けるのである。
目の前には丘の頂上の稜線と、その向こうに見える雪をたたえた“とんがり山”の姿が…。
風通しのよい分だけ足場もそれ程ぬかるんでいなくて、ここからは少し歩くのが楽になってくる。そんな気持ちの良い緑の道を歩いていると、周囲の気温が徐々に下がってきている事に気が付いた。さっきまでは森に守られてほとんど感じなかった風の冷たさが、今、周りに何もない大地の上で、急に感じられ始めたからだろう。
さっきよりもレイヤードを1枚多めにして、とにかく更に上を目指し続ける。

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この辺りの道は歩くごとに周囲の景色が変化を見せてくれて、森の中を歩くのよりも随分と楽しい道程である。足元には何だかモキュモキュとした踏み心地の不思議な植物たちが生えており、足の裏から感じる柔らかい感覚が妙に癖になる感じだ。
少し行くと、ちょっと開けた平らな台地に出た。目の前には、目指す雪山がそびえたっている。そう、あそこの上にある雪の部分の裏側に、目的の氷河が潜んでいるのである。

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この辺りまでくるのに、かかった時間はだいたい1時間半程度だろうか。
周囲には既にちょろちょろと雪の姿が見え始めていて、座って休んでいると身体がどんどん冷やされていく。パウロが配ってくれたチョコレートをかじりながらそんな寒さに身を縮こまらせていたら、何とここでは熱いTeaまで用意されていたのである。
一口飲むごとに、冷えた身体が芯から温まってくるのを感じる。やっぱり、山の上にはコーヒーかお茶が必需品だなぁ。

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10分ほどん休憩を終えると、そこからは荒涼とした山の斜面を登りながらその裏手へと進んでいくのだが、この道程の周囲の景色がまた、凄い。
何というか、自然の雄大さを感じさせられる風景。まるで、映画「ロード・オブ・ザ・リング」の世界にでも迷い込んでしまったような気がしてくる。
こういう風景に包まれていると、足場の悪い山道を歩く事も全然苦にならないから、不思議だ。この旅の中で何度もトレッキングに参加してきているから、身体が大分「山を歩くこと」に馴れてきているってのもあるのかもしれない。
2人とも旅を始める前にはハイキングやらトレッキングなんて全然縁のない生活をしていたのだから、これはかなりの“変化”である。山って、本当に素敵だなぁ(笑)。

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いくつかの小さな湖を抜け、切り立った崖の脇を通り過ぎながらズンズン山の奥へと進んでいくと、さらに上にある氷河湖から流れ出る小さな小川に辿り着いた。ここまで歩いてきて、途中で会った人っていったら、3人…いや、4人だったか。
とにかく人気のない山の中の、すぐ傍の氷河から溶けだした天然のミネラルウォーターである。覗きこむと、完全な透明度であることが分かる。パウロがペットボトルに入れて飲んでいるのにつられて、Jも両手で川を掬って、その手の上の天然水を飲みほした。
…うまい!!でも、手が冷たい…(笑)。でも…やっぱ美味い、です。

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そこから目指す氷河までは、本当にものの数分であった。現れたのは、ペルー:ワラスの69レイクで見たのと同じような色をした湖と、その向こうの“流れ落ちるような”姿をした氷河の全景だ。もうこれは、見た瞬間に「うわぁ~。」である。
水の色も、氷の色も、地面の色も、曇った空の色も、その全てが今まで見たことのないモノのように思える。自分たちが住んでいる世界とは、余りにも異なった風景だからだろうか。現実であるという“実感”が湧いてこない。そんな場面だ。
因みに麓からここまで辿り着くのに、だいたい3時間くらいだっただろうか。
パウロが湖の向こうに見える氷河の1部を指さして、「俺たちは今からあそこへ行って、小さく黒く見えているあの穴から氷河の中へと入っていくんだ。」と言った。
確かに、指さされた方向には、小さな黒い穴らしきものが見える。いよいよ、2人はここからメイン・イベントへと突入していくのだ…。

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