23 January, 09

「Buenos Dias。」

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Torres del Paineの岩峰が、昇り始めた朝日に照らされて、静かに淡く色付く。

朝、4時に鳴らしたアラームで目覚めると、寝ていた服装そのままで外に出た。朝着替えるのが面倒だから、昨日の内に支度した状態で寝袋の中に入っていたのだ。
外はまだ真っ暗闇で、木々の切れ間から見える空には星がキラキラと瞬いているのが見える。雲はなく、今朝の空は十分に晴れているという事だろう。
眠たい両眼をこすりながら、期待に胸を膨らませつつ、まずは暗闇の中で行列が出来ているトイレへ。みんな、ここでは同じように早朝から山へと出かけて行くのである。
ここから上の山の斜面は、かなりの岩場で“スティープ(急)”だと聞いている。暗闇の中でそんな山道を登るためには本当はヘッドランプが欲しいところだけれど、持ってないものをどうこう言っても仕方がないわけで…。手持ちの懐中電灯のスイッチを入れると、前方で山へと向かい始めた“ヘッドランプ付き”の他のトレッカーたちの後を追った。
彼らの明かりで、上手く誘導してもらえるかもしれない。

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案の定、山を登る道はかなりの岩場で、宵闇の中ではそれこそどこがトレイルなのかさえ判別がつかないような状態。彼らを追っかけてきて良かった。前方に見える明かりを頼りに進みながら、そんな事をふと考えていた。これは、懐中電灯ではちょっと辛い道のりだ。
それにしても、彼らの歩みの速いこと、速いこと。

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足元には小さな小川や“ぬかるみ”が連発しているというのに、それらを意にも介さず物凄いスピードで上へと登り続けている。置いていかれる訳にはいかないから、2人も必死にそれにすがり付いていく。息が切れる。やはり、多少標高が上がってきているのだろう。
昨日、夕方にキャンプ地に到着した時、暗くなり始めた山の上から軽装で降りてくる人々の姿があったのだが、彼らは今日のこの“暗闇歩行”のために、トレイルの位置を確認しに行ってたのかもしれない。そうでもしなきゃ、これ程うまく闇の中で正確な道を見つけられない気がする。
歩いている内、徐々に空が白み始めてきた。道もようやく少し見え始めてきて、彼らの誘導なしでも、これなら何とか登っていけそうだ。そこでようやく一息つき、息を整えながら更に上へと登っていく。そういえば、水のボトルをテントの中に忘れてきた。上でお湯沸かしてコーヒー飲もうと思ってたのに…。残念だけど、仕方がないか。
最後は、ものすごい大きさの岩が散らばる急斜面の“ロッククライミング”というような道則。本当の意味でのそれではないけど、そう呼びたくなるような道である。
そして、出発から45分後…ついに、目的のMiradorである、湖の畔に到着した。既にかなりの人影が見えるが、朝日はまだ山の向こうに隠れているから、彼らの顔まで見ることは出来ない。そういえば、起きた時にあれほど星が見えていた空に、今は大分雲がかかってきているようだ。何でだろう、風だってそんなに吹いてはいないのに…。
これで、“朝日にそまるTorres del Paine”が上手く見れるのか…ちょっと不安。

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それでもどうやら、Torresと反対側の空から、遂に念願の朝日が昇ってきたようだ。雲が真っ赤に染められて、とても素敵な朝焼け空が描き出された。凄い…。
あいつが雲に隠れなければ、この光がTorresまで届いてくれるはずなんだけど。
しかし、そんなみんなの願いは今日の空には届かなかったらしい。ほんのりとオレンジ色に染まったTorres del Paineを目の前にしながら、結局“まっ赤な”それを見届けることは叶わなかった。でも…それでも、今日のこの朝の風景は、一生忘れない思い出になるだろう。あの朝焼けの凄まじさ。出会った人々。そして、飲み損ねたコーヒー…。

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6日間歩き続けてきたからこそ、こうして今、こんな風に感動的な気持ちでこのTorresの前に座っている事が出来たのだと思う。
周囲の山々が、雲と一緒に朝日に照らされて、赤くキレイに染めあげられている。

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来た時には見えなかった岩山の道を、今はもう、2人ともはっきりと見ることが出来る。
テントに戻って最後の朝食を食べたら、いよいよこの大自然ともお別れだ。
始めた時には何も見えていなかった山での生活が、今は2人の目の前に、やはりはっきりとした姿を見せてくれている。とても素敵な日々。それも、遂に今日で終わるんだなぁ。

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朝食は、昨日のロッジ(Refugio Chileno)でカナダ人女性からもらったインスタント・ピラフだ。しばらく“ライス飯”を食ってなかったから、米の感触がとても嬉しい。量もかなりあって、朝から満腹。贅沢な朝食になった。昼飯はもう残ってないけど、これなら何とかゴールまで歩けそうだ。いや、まだスープが1袋残ってたかな。どこかでそいつを飲みながら、最後に素晴らしい景色の中でピクニックでも楽しみたいね。

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