17 December, 08

「Into the “Favela”。」

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Hostelの企画しているTourを利用して、南米最大といわれるRioのFavela(ファベーラ)を訪れてきた。

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Favela(ファベーラ)とはブラジルの貧困街を総称する名で、今回のTourで訪問することになったRioイパネマ周辺の高級住宅地に隣接するこのFavelaでは、現在20万人もの人々が日々の生活を営んでいるという。
公有地を不法占拠して出来た、貧困と危険を固めたような巨大な“村”というイメージ。
このTourは様々な映画やドキュメンタリーで特集されるこの特殊な地区の実情を少しでも垣間見れるチャンスかと思い、1人60レアル(≒2400円)の参加費を払って2人はTour Busへと乗り込んだのであるが…。
ミニバスに揺られて高級住宅地域を抜け、目的のFavelaへの入り口付近に到着すると、そこから先は移動手段をバイクに変えて、まずはFavelaが広がる丘陵地帯の最上部へと入り込んでいくことになる。
そこでは十数人の参加者たちが1台のバイクに1人という配分でまたがり、ごちゃごちゃと車や人が入り乱れたクネクネ山道を猛スピードで駆け抜けていく。
「ヒュー!!」というような奇声を発しながらハンドルを握るドライバーの後ろで、いつ対向車にぶつかるんじゃないかという、Favelaそのものとは全く無関係な“危険”を感じながらのスリリングな移動だ。とにかくどんな状況でも止まることなく進み続けるバイクの上で、無事に頂上に到着する事を祈り続けるしかない状態。
それでも一応、というか、当然全員のバイクが無事に頂上まで到達し、そこからようやくガイドと共にFavelaの内部を歩いて巡るTourの本番がスタートするわけである。

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バイクを降りたその瞬間から、何やら自然と体中に緊張が走る。
「写真撮影は俺がOKといった場所だけにしてくれ。」
そういうガイドの事前注意を思い出し、バッグから出しかけたカメラを仕舞い直した。
しかし、一応確認してみると、ここはどうやらまだ撮影してもOKな場所であるようだ。
早口の英語でFavelaについての説明を始めたガイドの横で、明らかにRioのビーチ周辺とは雰囲気のことなるその町の空気をJは写真におさめ始めた。

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前にも書いたとおり20万人が生活をする南米最大のこのFavelaは、もちろん単独で訪れることなどとてもできないような危険とリスクに充ち溢れた街だ。
しかし、それにも関わらず、こうして「Tour」としてまとめられた囲いの中の世界から見るその街は、そこに住む人々の活気と喜びに溢れているように見えた。

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通りには様々な品物を並べた商店が軒を連ね、ゴミがあふれ返った通りの汚さだけを除いてしまえば、その風景は地方都市の街角と全く変わるところがない。
中にはゲームセンターやネット屋まであり、子供たちが最新のゲームに熱中している。
あえて他のブラジルの地域・地区との違いを言えば、一所にギュウギュウに詰込まれたような家々が創り出す迷路のような狭い路地の風景で、これは今まで見てきた世界と照らし合わせると、モロッコのフェズやマラケシュの旧市街の中のような雰囲気を感じさせる。
ただ、そういった国の風景と比べてみてもやはり、ここには2人が思い描いていたような「貧困の世界」はない。キューバの街の中心街などよりも全然質の良い生活を、ここの人々は送っているのではないだろうか。
電気は街を縦横無尽に通り、水道もあればTVも見れる。ポストオフィスも1軒設置されていたりと、生活そのものは他の地域と何ら変わるところはないだろう。

ただ、それでもこの地区が一般の人々にとって「危険」であり続ける理由は、やはりそこにはびこる“麻薬組織”の存在にあるようだ。
絶えることのない組織同士の抗争や警察との攻防により、街ではいつ、どこから銃弾が飛んでくるかも分からない状況で、引率してくれているガイドの話によれば、つい2日前にも麻薬の売人が警察に打ち殺される事件があったばかりらしい。
しかし、ガイドは更にこう続けるのだ。「あいつは本当にイイやつだったのに…。」
全く、こういう話を聞いていると、世の中の一体何が良くて、何が悪いのかという事が、次第に分からなくなってきてしまう。
麻薬を売りさばきはするが街の住民にとっては“イイやつ”である若者と、正義感にかられてその若者を打ち殺してしまう警官…。
そのどちらが、この世界において本当に「良い」人間であるといえるのか。
日頃考える事もないようなそんな思いが、ふと頭の片隅をよぎっていく。
そして、そんなわけのわからない世界に足を踏み入れるこのTour自体が、実際どれほどの安全性を確保しているだろう…。考えれば考えるほど「?」が頭の中に増えていくけれど、やはりどれだけ歩いてみてもTour中にそんな危険な空気”を感じることはなかった。
結局、こうして街を歩いてきたとはいっても、Tourという囲いの中から覗き見ているような状態では、その“実態”は見えてこないということなのだろう。

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街角で音楽を演奏するこんな子供たちの姿さえも、多分このTourのために“造られた”風景の一部であるはずである。

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お金を払って、Tourに参加して、一体僕らはここに何を見に来たんだろう。
何だか本当に、良く分からなくなってきてしまった。
何かが起こっては欲しくないし、それならこんな汚い町で一体何を見たいっていうのか…。
結局そんな混乱した頭を抱えたまま、2人にとって初めての“Favela ”へのTourは何事もなく無事に(!?)終了したのであった。

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