23 December, 08

「“Boca”。」

boca00.jpg


1足早い、サンタさんからのクリスマスプレゼントだろうか…。昨日この街に到着した2人は、思いがけない「Big Game」を観戦する機会に恵まれることとなった…。

試合は、アルゼンチン1部リーグの最終戦。この試合にBocaが勝てば、その場で優勝が決定するという大一番であるらしい。
実際、そんな試合があることすらここに来るまで2人とも知らなかったのだけれど、昨日の夜にふとHostelのフロントに置かれたTourのチラシを目にしたことで、偶然にこの試合の存在を知る事となったのであった。その“チラシ”上に書かれていたのは、
「Grand Final “Boca vs Tigre”!! 250ペソ 日時12/23 Godfather社。」
23日って…んっ、もしかして、明日じゃないの、これ!?
突然の事に頭が混乱してしまって、タイミングの絶妙さに気付くのが一瞬遅れたくらいなのだが、それでもこれは確実に今日(23日)開催されるゲームの様なのである。こんなクリスマ直前の時期に、まだリーグの試合が行われていたなんて…。
ブラジルのリーグが終了してしまった時点でアルゼンチンについても完全に諦めてしまっていたから、思いがけない大試合との偶然の出会いに思わず2人とも舞い上がってしまった(特にJ)。こうなると、値段の高い・安いなんてもう、まったく関係ないです。
「そういえば値段は…250ペソ(≒7000円)?安い!!」
そう言いきってしまうくらいに、心は弾みきってしまっていたのである。
(旅的にいえば、非常に高い値段なのですが…。)
因みにTour内容はというと、“観戦チケット+往復バス+ガイド”。
試合内容によっては帰りのスタジアム周辺の雰囲気なんかも気になってくるところだから、往復の“脚”が付いてくるってのは、なかなか良いことなのかもしれない。
さて、そんなチャンスをモノにした2人は、当日の今日になると何となくそわそわした気持で日中の時間を宿の近場で過ごし、夕方5:00に集合するとワクワクした気持で横付けされたTourバスへと乗り込んだ。
用意されたバスは正直かなりオンボロの、言ってしまえば「ヒドイ」代物であったのだが、いざ中に入ってみると参加者が思っていたよりもかなり多い事に驚かされた。
2人の泊っている宿からは合計3人しか参加者がいなかった為、「何だ、以外とこういうTourにはみんな参加しないのかなぁ…。」なんて話したりもしていたのだが、そのバスの中には様々な場所から集ったFootballファンたちが超満員状態で座っていたのである。
中には、早くもBocaのゲームシャツに身を包んだやつらも、ちらほらと…。
そんな車内の空気に気持も少しづつ高まってきたところで、いよいよTour一行はスタジアムへと向けて出発である。
しかし、ここまできたところで2人にとってはちょっとした“誤算”というか、思い違いがあった事に気が付いた。
Buenos AiresでBocaの試合を観る… そう決まった時点から、何となくその試合はBocaの本拠地である「La Bombonera(ボンボネーラ・スタジアム)」で行われるものとばかり思ってしまっていたのだが、バスの進んでいく方向を見ていると、どうも全く別な場所へと向かっているように思えるのだ。しかも、道が混んでいるとはいえ、宿の付近から近郊にあるボンボネーラへ行くのにこれほど時間が掛かるわけはない。そうなると、一体このバスはどこのスタジアムへと向かっているのか…。

boca01.jpg

それすら分からなくなった頃あたりから、バスの揺れの気持ちよさと室内の暖かさ(暑さ)にやられて、いつの間にか2人とも眠りの世界へと迷い込んでしまっていた。
…そして、次にふと気が付いて目を開けた時には、窓の外に見えている景色のあちこちに1目でそれと分かるような「BOCAファン」の姿が!!
いよいよ試合会場となるスタジアムへとバスが近づいてきたようである。
何でもないような路上の片隅にゆっくりとバスが停車すると、ツアーガイドの指示に従ってみんな一斉に車外へと飛び出した。
大事なチケットは、バスの中で事前に彼(ガイド)からみんな1枚づつ渡されている。
さらにガイドの話を聞いていると、会場内の席はすべて“指定”などではなく、早い者順に好きな場所を確保するという方式であるようだ。

boca02.jpg

一応みんなでひと固まりになって入口までは行くけれど、その後は自由に試合を観戦し、終わったらまた今と同じ場所に停まっているはずのバスのところへ各自の責任で帰ってくるように… そんな一言の簡単な指示のみが、今回のこの“ガイド”にとって唯一の仕事という事のようだ。高い料金の割には、この辺の対応は結構“適当”なのである。
まぁ、大事なのはこの試合の空気を肌で感じることだから、ガイドがどんなものなのかなんてのはそれ程重要なことではないのだけれど…。

boca03.jpg

歩いて近づいて行くスタジアムへの道のりの途中には、機動隊による持ち物検査のための数ヵ所の“関所”が設けられている。
観客たちはそこで2回・3回と入念に手荷物チェックを受けたあとに、いよいよスタジアムの敷地内へと侵入する事ができるわけである。
それにしても…驚くのはやはり、このファンたちが発する熱気だろう。

boca05.jpg

後で聞いた話によれば、客席が全てBocaファンで埋まる“ボンボネーラ”の雰囲気は、これよりもさらに特別な気配を漂わせているらしいのだが、そうはいってもこの試合だって優勝が決まる大一番なのである。どこからともなく漂ってくる緊張感と盛り上がりは、やはり“世界基準”だといえるだろう。
スタンドに来ている客層を何気なく横からチェックしてみると、やはり圧倒的に“男”が多い事に気付く。だが、少数派である女性客たちもまたかなり熱くなってはいるようで、この辺りの風景からもこの国のFootballへの熱狂度合を何となく計り知る事ができる。

boca04.jpg

そんなアルゼンチン人たちの熱狂の渦の中で、とりあえず2人は地元応援団が陣取るゴール裏付近の、その熱狂のど真ん中に観戦のための場所をとった。
そこでは試合が近づくと共に応援の熱もどんどんと高まっていき、途中からは巨大な応援幕の登場によって視界が完全に遮られてしまった。

boca06.jpg

しかし、その前が見えないような密室空間の中であっても、彼らの奏でる応援のリズムは決して鳴りやむことがない。いや、それどころか益々ヒートアップしていくようだ。

boca07.jpg

そして、予定時刻を少し回ったころになって、審判の吹く試合開始の笛が鳴り響いた。
こういう試合にありがちな展開だが、試合は終始膠着した状態で、どちらも硬い守りを優先させているように見える。どちらにもなかなか攻め手がない状態、というか…。
結局前半はどちらにも得点が入る事はなく、「0-0」で折り返すこととなる。
そして、観戦場所を少し変えて臨んだ後半開始後まもなくのことだっただろうか。遂にその均衡状態を破った最初の1点目はしかし、相手チーム“Tigre”が入れたものであった。
静まりかえる、Bocaサイドのスタンド。
これはやばい、早く何とか同点にもっていってもらわないと…。
そんな気持ちで2人はドキドキしながらその後の試合を見守っていたのだが、繰り広げられる試合内容がどうも、予想したものと違うようなのだ。
こうなった以上はここからBocaが怒涛の攻めに転じるのだろうと思いきや、どうも試合を急いでいるのは逆にTigreの選手の方で、Bocaサイドは時間稼ぎに終始しているように見えるのである!?…これはもしかしたら、1点差で負けてもBocaの優勝が決まるシチュエーションなのかな…!??

boca08.jpg

その辺、現在の各チームの状況を全く確認せずにこの場にやってきてしまってたから、その場で状況を把握する事になってしまった。しかし、どうやらそれ(1点差負けでもBocaが優勝)は、間違いないことのようである。

boca09.jpg

守りまくるBocaの選手が途中で1人退場になり、少し場内がざわめく場面もあったものの、結局そのままスコアは変わることなく試合が流れていく。
そして、数分間のロスタイムも含めた熱狂の中のリーグ最終戦は、結局のところ最小得失点差「1-0」のままで試合終了。その笛が鳴り響くと共に歓喜の雄叫びをあげたのは、やはりBocaの選手とそのファンたちなのであった。

boca10.jpg

楽器の演奏と拍手、そして、彼らの歌はいつまでも鳴りやまない。
グラウンドには紙吹雪が舞い、選手がファンたちに感謝と喜びの気持ちを伝えに来ている。
ある意味、本当に感動的な場面である。
試合終了の笛を聞いた瞬間、喜びの万歳をした隣のオヤジの腕の振りにより「エルボー・ドロップ」をくらうこととなったMだけはどうにも渋い顔を見せてはいるが、基本的には今このサイドのスタンドに座っている全ての人々が、とても幸せそうな顔をしているように見える。これが、Footballの喜びってやつだろうか。
こういう瞬間があるからこそ、サッカーを観ることをやめられないんだろうなぁ…。

boca11.jpg

コメントを投稿





コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。