19 November, 08

「ハンモックとビール。」

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Amazon2日目。
早朝に東サイドから射し込んできた太陽の光で目を覚まして、まずは船の周りに広がる景色をぐるりとチェックしてみたのだが、どうやら昨日までのそれとあまり変わってはいないようだ。

ハンモックからノソリノソリと起き上がると、船尾に設置されている洗面スペースで顔を洗い、唯一乗船料金に含まれている“朝のコーヒー”を起きたばかりの胃に流し込む。
そして再び周囲に広がるだだっ広い平坦な風景へと目を向け、さらには船の下の大地を満たした珈琲色の流れに目をやってみるのだが…。

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まさか、かの「アマゾン川」を下る旅路がこんなに快適で平穏であるとは2人とも全く想像していなかったから、今のこの変わり映えのない、ともすれば「退屈な」風景が前から後ろへと流れていく様には、逆に驚きの念を抱かされているのである。
しかしこれは間違いなく、あの「アマゾン川」なのである。
もしもこの濁色の水の中を一瞬でも垣間見たならば、そこにはピラニアやらワニやら、もしくはイルカやらが自由に泳ぎ回る「これぞアマゾン」な場面がきっと姿を見せるはず…。
そんな想像をふくらませている途中で、ふと最近読んだ“カヤック冒険家”である野田知佑さんの著書「日本の川を旅する」の中に出てくるこんな文章を思い出してしまった。

「外国に行くと、そこの女を抱いて初めてその国を理解したと感じる人がいるように、ぼくはその川の魚を手で触って、初めて「ワカッタ」という気持ちになる。」(尻別川)

「川下りだけの面白さなんて、たかが知れている。
 遊覧船上の人たちの顔を見てごらん。つまらなそうにしているではないか。」(熊野川)

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…いかにアマゾン川といえど、ゆうゆうと川のど真中を進み続ける船に乗船しただけで即「アマゾンの大自然を堪能できるだろう」と思うのは、甚だ考えが甘すぎたのかもしれない。この甲板に据えられたベンチに座って上から眺めている限り、自然はあくまで「向こう側」の存在でしかなく、アマゾン川も単なる風景の一部としてしか見えないのだから。
河上には行き交う船の数も少なく、珈琲色の水面からは魚の1匹すら飛び跳ねてくれはしない。結局のところ、「世界最大の流域面積」を誇るその巨大な流れは、水から離れた船上の2人に対して何の冒険的な一面も見せてくれはしないのだ…。
それでもこの船旅が普通の遊覧船とは違って、ある程度の(いや、かなりの)「ワクワク感」と「喜び」を与えてくれているのは、この船が生活の為の移動手段であるがゆえに得られるある種の臨場感とともに、やはり“ハンモック”という乗船スタイルによるところが非常に大きいのだろうと思う。
実際、これに横になってのんびりと本を読みながら、ゆったりとした川の流れに身を任せているというのはそれだけでとっても気持がいいものだ。

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そして、ここでは何といっても“ビール”の存在を忘れるわけにはいかないだろう。
ビールは上階のバーで売られているのだけれど、これがもう、凍りそうなくらいにキンキンに冷やされているのである。ブラジルは基本的にビールを“キンキン”に冷やして飲む文化になっているようで、このあたり、ペルーやボリビアなんかよりもブラジル人は「ビール」ってものを良く分かっているのである。そして、こいつを昼間の照りつける太陽の下で気持ちの良い川風に吹かれながらグビグビと一気に飲み干すのが、もう最高に感動的な美味さなのだ。
ハンモックとビール。これだけで、叶わなかった“冒険的な日々”を、補ってあまりある魅力となっているのである。
因みにそれ以外の船上生活についても書いておくと、2日目の今日は航海途中にいくつかの町の港に停泊する機会があって、その都度船体に積んでいた物資を下ろしていたようだ。

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主に水やジュースなどの飲料製品が多かったのだが、これが見ていると「そんなに積んでたの!?」と驚いてしまうくらいの量なのである。船の浮力という物の偉大さを改めて痛感させられてしまう。あれだけ降ろせば、これからの移動は速度が倍くらいになりそうだけれど…!??

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また、ある港では船が到着するのを今か今かと待ち構える若人たちが総勢十数名ほど!?
桟橋に船が近づいていくと、1~2 mくらい離れている内から飛び乗るようにして船内に突入をしかけ、それぞれにアイスやら弁当やらおつまみやらチーズやらと様々な食料を売り歩いていた。客取り合戦という感じだろうか。
そしてこの陸(町)からの熱気が、また単調な船旅を盛り上げてくれたりするのである。

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そんな風にして、川の上での1日が今日もまた静かに暮れていく。
アマゾン川は、今日もまったく穏やかな流れであった。

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