09 November, 08

「トイレの恐い話。」

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夕方、滝から路線バスのターミナルに戻ってみると、昼間と同じおばちゃんがきちんと店番を続けていて、2人の荷物も変わらず“レジ裏”という預け場所(!?)に置かれていた。
そんな荷物たちを受け取り、「グラシア…いや、オブリガード!!」と、馴れないポルトガル語でお礼をいいつつ別のバスに乗り込んで更に長距離バスターミナルへ移動。

PM6:45発のサンパウロ行きのチケットを手配して、早飯を食らった後にいよいよ“問題”の夜行移動を開始したのである。
旅の常套手段となっている夜行バス移動を前にして、一体何が“問題”だというのか…。
答えは、他でもないこの記事のタイトルの中にある“トイレ”に関係しているのである。
そしてその悲劇はターミナルをバスが出発してから30分も経たずして始まってしまった。

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2人が予約したバスの乗車番号は、時間ギリギリに手配した事もあってかなり後方を示している。実際それがどの辺りなのかまで確認をしていなかったのだが、いざバスに乗り込んで席を探すと、それはまさに「トイレの前」という、今まで座った事のない特殊な(!?)立地条件なのである。
「まぁ、多少ドアの開け閉めがうるさかったりするとは思うけど、眠ってしまえばそれ程気にならないんじゃないかなぁ…。」
その席に身体を埋めながらそんな事を話していた2人の論点は完全に的を外れてしまっていた。実際の問題点は「音」などという生易しいものではなかったのだ!?
問題は、そこから発せられる「臭い」であった。

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それでも出発直後はまだ良かったのだ。いや、良かったというより、全然匂いなど気にもならなかったのである。ドアはきちんと閉まっているし、トイレ内の窓は開けられ、換気も一応されている状態だから。
しかし、バスが動き始めて15分程経った頃だろうか…何やらタダならぬ「臭気」が、後方から2人の鼻腔を刺激してきているのに気がついた。
何だ、どうしたどうした!??
慌てて後ろを振り返ってみるが、トイレのドアが開いている気配はない。
「外から入ってきた町の排水系の臭いかなぁ…。」
そうではなかった。
よく見ると、さっきまで横の席に座っていたおばちゃんの姿がないのだ。
どうやら、いつの間にか2人が気付かないうちにトイレ内部への侵入に成功し、今まさに「こと」の最中にあるらしいのである。
それにしても、その臭いがドアの隙間からこれほどまでに漏れてくるとは…。
しばらくすると、やはりそのおばちゃんがドアをバタンと開けて外に出てきた。任務を無事に遂行した事がありありと感じられる「生の臭気」が再び2人の鼻をついてくる。
この臭気が晴れるまでには、少し時間がかかりそうだ…。
そう覚悟を決めてはいたものの、実際いくら時を経てもその臭気は威力を弱める気配が見られず、それどころかさっきと全く変わらない威力を持続しているように思えるのである。
「これは一体、どうしたことだろうか…。」
そう言いながらも薄々考えていたことを確認すべく、Jが誰も入っていないそのトイレ内部へと侵入してみると、やはり思ったとおり、そこには巨大な「ヤツ」が座り込みを続けていたのであった。そしてあろうことか、いくら水攻撃をもってそいつを流してしまおうとしても、そいつは全く1mmたりとも動こうとしないではないですか!?

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こいつ…何てかたくななヤツなんだ…。
どうやらおばちゃん、自分でも予想外のそのかたくなな「ブツ」の処理を途中で諦めて、そのまま放置した状態で外に出てきてしまったらしいのである。
Jもそれ以上どうする事も出来ず、帰還して隣のMに大まかな状況を説明する。
この頃には2人より前の席に座る客たちにもその“異変”は影響を与え始めていて、みなしきりに後ろの“トイレ方面”に目を向けている様子。
おばちゃんはというと…われ知らぬ顔をして、黙って窓の外を見ているだけである。
みんなに気づかれまいとしているのだろうが、そのせいでトイレ前に座るJとMの2人に視線が向けられたりするのははなはだ迷惑な話だ。
とはいえ、このままでは特に手の打ちようもないから、顔を歪めてその臭いに耐え続けるしかない。途中で別の乗客が匂いに耐えられなくなったのか、バスの天井部に開いた換気口のハッチを開けてしまった。これで臭いの方は大分和らいだものの、今度は外の冷気が入ってきて寒いったらないのである。
まったく、こっちを立てればあっちが立たず、あっちを立てればこっちが立たず…。
その、寒いやら臭いやらのとんでもなく居心地の悪い状況が続く車内後方の“魔の地帯”に押し込められたまま数時間を過ごし、PM9:00をまわったあたりでようやくバスが夕食休憩の為にとある施設の前で停車した。

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車内の様子を確認するため、後ろの席:トイレ付近にまでバス会社の若手社員が巡回に来る。そして、防犯確認のためだろうか、トイレのドアを開けて内部を確認した途端…ようやく彼も、後部のこの、過酷極まりない状況を十分に理解してくれたようだ。
速やかに車を施設内の洗車場まで移動させ、ジェット噴射式の掃除用具を窓から挿入したかと思うと、遂に“ヤツ”の“強制退去”に見事成功したのであった。
まったく、あのおばちゃんの“一撃”のせいで、えらく辛い旅路を強いられてしまったもんだ…。しかしそれもとりあえず、ここで一時全てがキレイに清算されたわけだ。
掃除を終えてトイレから出てきた若手社員と目が合うと、「してやったり。」な顔を浮かべた彼の方から右手こぶしで「グッド」サインを送ってきた。
こちらも彼の素晴らしく素敵な「グッドジョブ」に敬意を払いつつ、大きなアクションで「グッド」サインを作り返す。そして忘れずに一言、「オブリガード!!」
今回は、荷物おばちゃんに言った時より、きちんとポルトガル語が出てきた気がする。
窓の外には、すっかり暗くなった草原の風景が広がっている。
それにしても、夕暮れ時からの“とても素敵な車窓からの風景”とは全く似つかわしくないような、なんとも汚く、そして「臭い」お話なのであった…。

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