まわりが少しざわついていたからだろうか、なんとなく目を覚ましてしまい、窓の外を見てみると、バスがちょうどNAZCA（ナスカ）のターミナルについたところだった。

辺りはまだ暗く、腕にまいた時計の針はAM4:00を指している。
AM5:00到着予定だと聞いていたから、1時間も早くついてしまったようだ。気持ち良く眠れていたのに、まったく、ちょっと早すぎるなぁ。
眠い目をこすりながらバスを降りて荷物を受け取ると、今日もいつものように宿の客引きが声を掛けてきた。
2人はガイドブックの中から泊る宿を決めていたのだが、パンフレットを見せてもらってるとかなり「新しそう」なつくりのそのホテルにちょっと魅かれてきてしまった。
Free InternetでCATV付き、バスルーム付のダブルルームが40ソルであるらしい。
この時間から入っても明日の1泊分のみで入室させてくれるっていうから、予定を急きょ変更して、この客引きの案内してくれるホテルをとりあえず見てみる事に。
TAXIを拾って宿に到着すると、見るからに「新築」と言う感じのモダンなデザインのちいさなホテルがそこにあり、フロントを通って中に入ると、今度はその長屋のように奥に続く“奥行きの深さ”にまたまた驚かされてしまった。
部屋も清潔で、ベッドも広く、快適そのもの。2人が入室するのが決まってから洗面室に鏡を取り付けに来ていたから、まさにOPENしたばかりのホテルであるのかもしれない。
ほんと、この旅を始めて以来、客引きの宿で失敗したことないなぁ
この時点で早朝4時半くらい。AM8:00に目覚ましをセットして、ひとまず2人はそのまま眠りについてしまった…。
目を覚ましたのは、ドアをたたく音が聞こえたAM8:00過ぎ。どうやら目覚ましは上手く鳴らなかったみたいだ。そして、急いで出たドアの向こうに立っていたのは、今朝の客引きおじさんであった。
実はこの時間に、Nazcaの地上絵へのフライトについて説明してもらう事を約束していたのだが、あまりの眠さに一瞬明日にしてもらおうかと思ってしまったくらい…。
しかし、ドアの外の天窓の向こうに広がっている抜けるような青空を見て、飛ぶなら今日はチャンスかもしれないと思い直し、早速おじさんの話を聞かせてもらう事にした。

聞いてみると、このおじさんにフライトを手配してもらった場合、25分間の10人乗りセスナでのフライトがUS$60、40分間の3人乗りセスナによる低空飛行フライト（スペシャルフライトと言っていた）ならばUS$75であるらしい。
今はハイシーズンというわけではないだろうし、ガイドブックの基準値からいけばちょっと高めな気がしたから最初は2人とも渋っていたのだが、反面、今日、今から午前中のフライトに間に合わすためには、このおじさんと交渉するしかないかもしれないとも考えていた。
2人がそんなにも決断を急いだ理由はいくつかあって、ひとつは今日の天候がかなり良さそうだったということ。地上絵を見るなら午前中の方が空気が澄んでいるとの話もあったから、それも気にしながらこの交渉をしていた。
そしてもう1つの理由が、今日がＪの誕生日だっていうこと。
何となく、“Birthday Flight”というのを合言葉にしてLimaからここへと移動してきていたから、出来れば今日飛びたいという思いを抱いていたのだ。
本当であれば他の手配会社などを何件か廻って値段を見定めた上で決定すべきなのだろうけど、今回についてはもう腹をきめて、このおじさんとの交渉で決めてしまう事に。
「空港で他の誰に聞いてもらっても、自分の値段が絶対に1番安い」といいきってしまう胡散臭いこのおじさんとの交渉の結果、スペシャルフライトの方を1人US$70にまけてもらって、今日の10時過ぎのフライトを予約することにしたのである。
交渉が成立すると、その後すぐにおじさんの車でセスナが飛び立つ空港まで移動だ。
そこでTBS制作によるNASZAの地上絵についての日本語ガイドDVDを見せてもらい、その後に搭乗口のある建物へとさらに移動。

少しの待ち時間の後、同乗することになったカナダ人のKen（数年前に日本で5年ほど働いていたため、日本語がとても上手。川崎市の生田と登戸に住んでたらしく、大学時代に生田のキャンパスに通っていた2人も嬉しくなって世間話に花を咲かせてしまった。）と3人で小さなセスナの機体に乗り込み、いよいよこのNAZCAの大空へと飛び立つ刻がやってきたのだ…。