08 October, 08

「INCA JUNGLE TRAIL ~first day~。」

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出発の朝。天気はやはり、昨日までと変わりのない「どんより曇り」であるらしい。
AM7:30に宿に来る“迎え”に間に合わせるため、早めに起きて最後の荷造りとチェックアウトの事務手続きを済ませる。

これから始まる3日間のトレイルに備えて2人が用意した荷物は、ほとんどが着替えや雨具などの「衣類」ばかりであるのだが、それでも天候の変化やアクシデントに備えようと思うと、自然とそれなりの量の荷物になってしまった。なので、結局Mの使っているBack Packを使用してそれらを全て詰め、Jが持ち運ぶことにしていた。
Mは小さなリュックにすぐ使いそうなものと食料だけを詰めて持ち運ぶという作戦である。
マウンテンバイクと歩きをメインとして移動していく今回のツアー内容を考えると、Mは少しでも小さな荷物で挑んだ方が良いだろうと踏んだからだ。
全ての準備を手際よく完了させ、時間前からじっくりとその“迎え”が来るのを待っていたのだが、結局来たのは時間を過ぎてから、2人が心配顔で外に出た後であった。

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車が宿の側までくるのかと思っていたのだけれど、来たのは若いペルー人の兄ちゃん1人。
そいつに連れられてアルマス広場の向こうへと移動し、そこでようやくツアーバスに合流する事になった。
中には既に先客が6人。その後新たに加わった3人を含めて、合計11人のツアー客+ガイド1人というのが今回の旅の陣容である。
因みに、この「INCA JUNGLE TRAIL」。俗にいう「INCA TRAIL」というのとはまた別のものとなっている。
通常、インカ道をマチュピチュへと向かう「INCA TRAIL」は公認のガイドを付ける事が義務付けられており、インカ道への1日の入場者数が決められてしまっていることもあって、予約は3か月以上前にしておかなければ参加するのは難しいようなものとなっているのだ。そんなこと、いつどこに到達するかも予想できない2人のような長期旅行者に用意することが出来るはずもなく、最初から2人はそのルートは断念していたわけで…。
今回2人が参加している「INCA JUNGLE TRAIL」は、それとは全く別のルート。
簡単に書くと、次の様な道程となっている。

1日目:Cuscoからバスに揺られて、Ollantaytambo経由でAbra Malaca(標高4350m)
まで移動。そこからマウンテンバイクでSanta Maria村までの山くだり(約40km)
2日目:Santa Maria村からSanta Teresa村までの山道(途中にインカ道あり)
    を徒歩で移動(約24km)
3日目:Santa Teresa村からAguas Calientesまでの道のりを徒歩(約20km)
(途中からは鉄道レール上を“STAND BY ME”していく。)
4日目:Machu Pichu見学。
5日目:Aguas Calientesから列車でOllantaytamboまで移動ののち、バスに乗り換えて
    Cuscoへと帰還。(4泊目は、2人がオプションとして申し込んだもの。)

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とにかく、今までの旅の中で最も身体を使った観光なんじゃないかというくらいに、どこをとっても「自分の力頼り」な道程なのだ。
そうなってくると、心配なのは天気の問題である。
昨日までのクスコの天気が「曇りのち一時雨」みたいな状態だっただけに、今日のこの曇り空も、何だか不吉に思えて仕方がない。
そして、その心配は決して「考えすぎ」なんかではなかったのである。
途中、Ollantaytambo(オリャンタイタンボ)でトイレ休憩をとった頃には空は一時“快晴”の様相を呈していたのだが、そこからさらに山の上へと進んでいくうちにどんどんと雲行きが再び怪しくなっていき、遂には何と、窓の外に雪がちらつき始めてしまったのだ!?
この時期、この緯度のこの場所でまさか「雪」が降ってくるとは!??
ほんとに、この後マウンテンバイクに乗り換えて、40kmも走れるんかいな…。
そんな2人(&その他のツアー客)の不安を知ってか知らずか、雪は途中で雨に変わったものの「止む」気配は全くなく、遂にはそのまま自転車に乗り換えるための「出発地点」に着いてしまったのである。
ここでのペルー人ガイド“アレックス”の一言、
「雨が降ったのはツアー会社のせいではないが、もしこのまま自転車に乗り換えるのが嫌な人がいるのであれば、このままバスに乗り続けて今日の目的地であるSanta Mariaまで移動することも可能だ。乗り換えるか乗り換えないかは、各個人の自由意思で決めてもらいたい。さあ、どうするみんな、マウンテンバイクに乗るか、それとも乗らないか…。」
そう言われても、みな自力でマチュピチュまで行くんだという意気込みでやって来ただけに、それをパッと放棄する気にも なかなかなれない。
「マウンテンバイクでいくよ。」
1人、また1人と、そういう声が上がりだしたのを聞きながら、2人もここでもう一度気合いを入れ直すことになった。
「よし、行こう!やってみれば、何とかなるって!」
結局、1組のドイツ人老夫婦の夫人の方を除いた全員が自転車に乗り換える事をきめて、早速車の屋根に乗せてあった人数分のマウンテンバイクが組み立てられていくことに。
Mはそれでも、多少心配そうな顔を見せている。
それもそのはず、ただでさえ普段から「自転車に乗るのが苦手。」と豪語してやまず、最近になってようやく上手くカーブが曲がれるようになった程の腕前なのだ。
この天候のオフロードコース、しかも「下り90%(=スピーディ)」であることを考えると、不安にならない方が不思議なくらいなのである。
「でも、本当に大丈夫かな…。」
そんな不安げなMを勇気づけながら、いざとなれば途中でリタイアもしょうがないかも…と考え始めるJ。
なかなかに過酷な「Machu Pichuへの道」のスタートとなってしまったのであった。

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そして迎えたPM12:30、用意されたチーズサンドイッチとバナナ&ジュースを胃の中に押し込み、いよいよ悪路&悪天候を相手にしたサバイバルレースがスタートする事となった。
愛車となった2人のマウンテンバイクは、それでもなかなかの安定性の良さを発揮して、心配していたドロドロの悪路をうまい具合に走りこなしていく。
とはいえ雨は容赦なく2人の頭上から降り注いでいるから、自然と体は水気を含んで重くなり、視界はぐっと狭められてしまう。
途中に横を通り過ぎて行くバスやトラックに何度も「水ハネ攻撃」を喰らわされながら、体中泥まみれの水まみれになって、ひたすら前を目指して走っていく。
すると、途中からもう、何もかんもがどうでもよくなってきてしまって、濡れるのも泥だらけなのも、全てが何やら楽しく感じられてきた。

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「なんだこれ、グッチャグチャだけど、何か妙に面白いじゃん。」

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そんな状況の中で、お互いに何かと冗談を言い合いながら笑い顔で悪路を駆け抜けていたのだが、やはり40kmはそうやすやすとはゴール出来るはずもない。
しかも、天候は最悪の「雨」なのである。
行けども行けども泥道は何処までも続き、走り始めて1時間半も経過した頃には、次第に身体のパワーが雨に吸い取られていくように感じられ始めた。
そして、2時間ほど走って全行程の半分くらいを走破したころ、なんとJの乗っていた自転車のチェーンが、がっつり切れてしまったのである。
何てこった!!?
仕方がないので、その切れたチェーンをブチっとむしり取り、下りはブレーキのみで走り抜け、登りは自転車から降りて押して進むこととなってしまった。
Mも「ちょうどブレーキ握り過ぎて手が痛かったところだから。」
と、一緒に歩いてくれていたところに、後ろからきたイギリス人カップルが「大丈夫?」と声を掛けてくれたのだ。
そのカップルに、チェーンが切れてしまったアクシデントの事をガイドに報告してもらうことをお願いし、そこからさらに走り、歩くこと20分くらいだっただろうか。
途中の売店で待っていてくれたガイドとようやく遭遇し、新しい自転車と取り換えてもらうと、そこから更にラストスパートを掛ける勢いで2人併走でゴールを目指し始めた。
バスが泥を跳ね飛ばして行く度に、ちくしょ~って気持ちを強くして前へと進んでいく。そして、出発から4時間以上がたったころ、いくつもの小さな村を通り越したその先に、ようやく今日のゴールとなる「Santa Maria村」へとたどり着くことができたのである。
1日目にして、こんなにも感動的なゴールを迎える事になるなんて!?
全身こんなにドロドロ水浸しになってしまって、明日の着替えはどうするんだ、一体?

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そんな事を頭の片隅でちらっと考えてはみるものの、それ以上つきつめて考える気力も体力も残っていない。完全に燃え尽きた後の灰のような状態のまま、夕食後すぐにドミトリー部屋のベッドに倒れこむようにして横になり、そのままウトウトと眠りの世界に吸い込まれていったのでした…。

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