05 September, 08

「5125m ~ Nevado del Ruiz ~。」

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傾斜した大地を踏みしめる2人の足の下に積る雪が、次第にその深さを増してくる。
4800m地点の登山口を出発した一向は、クラウディアの歩調に合わせてゆっくりとNevado del Ruizの山肌を登っていく。数メートル、数十メートル進む度に小さな休憩をはさみながら、「Muy Bien!!」という決まり言葉で皆を励ますクラウディアの声にそそのかされつつ、徐々に“上”へと移動していくのだ。

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登り始めに降っていた粉雪も数分後にはすっきりとやみ、目の前の雲も徐々に晴れて眩しいくらいの青空が広がってきている。
実際には、空の光を反射する雪の“白”がその青空自体よりもさらに眩しくて、その光の強さに比例するように雪が解けた地面は徐々にぬかるんできてもいた。
足場が悪い。そして、空気の薄さがさらに皆の歩みを不確かなものにしていく。
数メートル毎に休憩を挟んでいるのに、上に行く程なかなか息が整わなくなってくるのだ。
晴れてはきていても空気はかなり冷たく、ウィンドブレーカーのフードを頭に被ってマフラーで顔を覆っても、まだ隙間から冷気が忍び込んでくる。
フランス人は相変わらずハーフパンツで登っているのだが、見ているこちらが寒くなってくるような錯覚を覚え始めてしまうくらいだ。いや、絶対寒いよ、それは…。
2人は登山靴を履いてるわけでもないし、ズボンも防水仕様ではないから、雪に足を取られるたびに靴と靴下の隙間から水気が入ってきて、さらに濡れたズボンは感じる寒さを増幅させてしまう。なんだか、スゴイとこにきてしまったなぁ…!?
でも、少し登っては挟む休憩の度に見下ろす周りの風景はやはり特別な魅力を持っていて、それもまた、別の意味で「スゴイところに来てしまったなぁ…。」という気持ちを起こさせてくれるのである。
Mも「登山はきらい。好きなのは海。」と断言しつつも、必死に息を整えながら全力で皆の足取りについて行っている。あと少し、もう少しで…。

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そして、ついに到達したこのツアーの最終目的地点は、何と標高5125m!!
そこに立てられた看板の標高表記と、周りに広がるとてつもないSpectacularな風景を同時に眺めながら、ここまで登りきった自分たちに満足するような、とにかく2人でやりきったんだという達成感を、じわじわと、しかし確実に感じていた。

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山は、やっぱり舐めちゃいけないですね。でも、この充実感はかなり気持ちがいい。

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しかし、その場でその気持ちに浸り続けるには余りにも“寒すぎる”ってこともあり、感動もそこそこに、早速今度は下山を開始。
同じ道を帰るのは少し億劫だなぁ…なんて考えていたら、クラウディア、帰りは違う道を用意してくれておりました。
道というより、雪の滑り台!?
十分に積もった雪の上を指さして、「みんな、ここをお尻で滑り降りていきましょう!」
えっ、2人ともクラウディアと違って普通のズボンだから、滑ったらお尻ビチョビチョになっちゃうと思うけど…!?
そんな事、ここまで来るとお構いなしみたい。2人も思い切って滑り始めてみると、かなりのスピード感に“面白さ”の方が勝ってしまって、足もとも尻もビチョビチョにしながら転げまわって山を下ってきた。

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これは実際、そうとう面白い!!
(出来れば、替えのズボン&靴下があると最高だと思うけど。)
そして、登ったときには2時間くらいかかった4800m地点までの距離を、あっという間に降りてきてしまった。
そして、そこの売店で飲んだ暖かい「ミロ」は、本当に体に沁みわたってくる幸せな味だったなぁ…。
休憩を終えるとミニバスに乗り込み、National Parkを出て更に少し行ったところのホテルにて、疲れた体に遅めの暖かい昼食を。
ここには何と、外のプールに温泉がたっぷりと溜められていて、雪山で冷え切った体を芯から温める事ができるのです。
日本人にとって、ここで温泉につかれるってのは、かなり幸せなひと時であり…。
多少の虫が浮いてることなんて、ほとんど気にもならなかったです。
スキーの後の温泉と一緒。心も身体も、本当に芯から“ホカホカ”になりました。

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最後まで、ほぼパーフェクトに楽しめた今回の登山ツアー。
参加費用は確かに高いけれど、それを考えても是非体験してもらいたい、お勧めの内容だったと思う。
そして、帰り道、皆が疲れて黙りこくって窓の外の夕方の景色を眺めているような“けだるい”、それでいて充実感のある空気の中で、今日一日の楽しいあれこれを何となく思い返しながら、最後まで気持ちの良い満足感をもって、無事に宿へと帰ってきたのであった…。

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