09 November, 07

「辿り着いた先は…。」

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昨日はガイドをつけての一日だったから、今日は自分たちの好きなように山道を散歩したくて二人だけで宿を出てきた。
コースは昨日とは逆サイドの、下流に向かって延びている凸凹山道。
こちら側にはいくつもの小さな滝が連なっており、夏場であれば飛び込みが出来るようなプール状の水場まである。切り立った山々のおりなす自然の彫刻とでもいう様な周辺の風景はとても美しく、それらに囲まれた道を歩いているだけでも十分にこの地の魅力を堪能出来るのだが、今回二人はその道の先にある「メキシカン ヴィレッジ」と呼ばれる村を目的地としてこの散歩をスタートしていた。

この村がなぜその名前で呼ばれているのかは学習不足でよく分からないのだけれど、かなり古くからの姿をそのままに残す、ベルベル人たちの住んでいる村らしい。
通常ガイドをつけると色々な見所と共にその村の訪問も含めて約3時間半の道のりなのだが、なにせ今日の二人はガイドを付けずに出発してきたものだから、途中何度も道に迷ってはその都度通りすがりの人に道を尋ね、かなりゆっくりとしたペースで前に進んでいる。これはいつになったらそのビレッジに辿り着くのやらと不安を感じ始めた頃に、またしても道が行き詰ってしまった。そこの川は底にぽっかりと開いた穴の中へと水が落ちていく滝のようになっており、上から覗いただけでもかなりの迫力。下に降りることができれば、その水の行く先、つまり、滝つぼを見渡す事ができそうなのだが…。


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なんとか前に進めないかと道を探してみるのだけれど、なかなか良い道が見つからない。ここはどうかなという通路らしきものを一箇所見つけ、Mにはその場に残ってもらってJが一人でその先を確認しに行ってみたのだが…やはりこの道もすぐ先のところで行き詰っていた。
Mがこちらに来てしまわない様に声を掛けておこうと思い、Jがその場所から名前を呼んでみたところ、しかし、いっこうにMからの返事が返ってこない。おかしいなと思いながら今度はかなり大きな声で5回、10回と名前を呼んでみるのだが、それでもやはり返事は全く返ってこないのだ。ここまでくるともうかなり頭がパニックになってきた。岩をはさんで5mほどのところに居るはずのMに今の声が聞こえていないワケはないし、もしかしたらMも前に進もうとして途中で滝に落ちてしまったんじゃ…!?
そんなイヤなイメージが頭をよぎり、Jが急いで元の場所へと戻ってみたら、Mが泣きそうな顔になってこちらを見ていた。
無事だった事に安心しつつ、その泣き顔のワケを聞いたところ、実はMもJの名前をそこから何度も何度も呼んでいて、返事が無いためにJが抱いていたのと同じ「墜落」イメージを頭に描いてしまった様なのだ。二人共同じ事を考えて、お互い同じように焦ってしまっていたという事!?
それにしても、なぜこの距離でお互いの声が聞こえなかったのか…。考えられる理由は唯一つ、すぐそばで豊富な水を落とし込んでいる「滝」が轟かせている轟音である。確かに気にしてみると大きな音ではあるけれど、まさかここまでキレイに声が掻き消されてしまうなんて…。
結局、その滝つぼを見る事はあきらめ、再びヴィレッジ目指して2人は先へと進み始めた。しかし、こちらもすんなりとは上手くいかず、やはり何度も軌道修正しながら相変らずの迷い道。
最後に羊飼いのおじさんに教えてもらった「えっ、ここ??!」っていう様な山道、いや崖っぷちをそれでも前へと進んでいくと、ようやく見えてきた山の山頂に一軒の家が現れた。ようやく、辿り着いたのだ!!あの家の向こう側に「メキシカン ヴィレッジ」が続いているのに違いない。手持ちの水も少なくなってきていたし、村に行けばコーラの一つも飲む事が出来るだろう。….そんな期待と達成感を抱きながら山頂に到達してみたところ…二人の眼の前に広がっていたのは、見渡す限りに続く山の峰峰と、その向こう側に小さく見える出発地点の滝の姿。そこには村なんてものは存在しておらず、家は山頂にポツンと建つその一軒だけであったのだ。どうやら、二人は完全に道を間違えてしまっていたらしい。あまりの脱力感で、2人共しばし呆然とそこから見える景色に目を向けていた。なんて2人らしい結末…。家のまわりでは小さな男の子が一人、ロバや鶏の間をあっちこっちへと駆け回っている。そして、しばらくすると家の中からその母親らしき女性が顔を出し、こちらの方へとやってきた。もう日没も近づいてきたし、そろそろ宿に帰り始めた方が良いのかな….そんな言葉をどちらからともなくつぶやいた所で、その母親に帰り道を聞いたのだが、そこにある道は唯一つだけ、やはり来た道を帰るしか方法はないのだ。そうだろうとは思っていたけれど、何だかさらに脱力感が増してしまった。
帰りは二人共疲れはててたけど、あまりにも疲れすぎて逆にちょっと楽しくなってきたような…。もう、笑うしかない心境の中、足もがくがくになりながらPM5:00にやっとの事で宿に到着。
なにはともあれ、今日もまたスバラしくアドベンチャーな一日であった。

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