「AFRICA~EUROPE」
モロッコでの最後の朝食を宿の屋上のテラスで済ませ、全ての荷物がPackingされている事を確認してから、いよいよ2人は空港へと向けて出発した。
途中でJEMMA EL FNAに寄って、よく冷えたオレンジジュースを一杯注文したら、店主がもう1つのコップに半分だけオレンジジュースを注いで「サービス」だって渡してくれた。 新たな旅立ちに何かイキオイをつけるような気持ちでそのジュースを一気に飲み干し、その後2人は広場を離れてタクシー乗場へと歩き出した。
すると、2人がその「タクシー乗場」に到着するより先に、目の前を通りがかったタクシーの運ちゃんが大きな声で話しかけてきた。2人が「AIRPORT」と行先を告げると、早く後ろに乗れとジェスチャーを返してくる。じゃあいくらで行くのかと念の為に確認したところ、その運ちゃん曰く「80DHでもう限界のGOOD PRICEだ。」って。
80DH !?? 実は2人は出発前、宿のフロント係にAIR PORTまでのタクシー料金の相場を確認しており、その際に「高くておよそ60DHくらいだろう。」との回答をもらっていた。だからその運ちゃんの言値にも簡単にはOKを出さず、もうチョイ安く行ってくれと強めの口調で詰め寄ったのだが、荷物がデカイからという理由も挙げつつなかなか相手にしてくれない様子。 なのに、埒があかないと諦めて帰ろうとした途端、「ちょっと待て!」ということになって、ようやく交渉が動き始めるのだ。
これはモロッコ内のどこに行っても同じなのだけれど、この様にして「立ち去る」そぶりを見せながら金額交渉をしていくと、タクシーにしろ、商店にしろ、もうみるみる値段が下がっていくのだから本当に面白い。 そうしてたとえば最初の額の10分の1くらいで交渉が成立したとしても向こうは満足そうな顔をしていたりするのだから、じゃあ本当の値段はいくらなんだと、もう何だかワケが分からなくなってきてしまう。
そんなモロッコ人の商売根性に最後の最後まで付き合いながらも、これからしばらくはそういったある意味では「楽しい」交渉事ともお別れになるのかなと、妙に寂しくなったりもした。
結局60DHで乗り込んだタクシーは、大渋滞のマラケシュの道を前の車を追い越しながら事故すれすれのドライビングテクニックで何とか順調に進んでいき、20分くらい走った末にマラケシュ国際空港の前に到着した。
この時点でまだお昼過ぎ。 PM4:00だと思っていたフライトがPM6:40の間違いだった事もあって、たっぷり時間が空いてしまった。
空港のロビーには小さなカフェが1つあるだけで、取り立てて何もする事がない。仕方がないからいつもの通りに本を読んだり日記を書いたり、少しづつその待ち時間を消化していき、CHECK INカウンターが開くと同時に一目散に受付を済ませて待合ロビーの方へと移動。中にはどこの空港にもある様な何の変哲もないDUTY FREE SHOPが並んでいて、既にモロッコらしい雰囲気はどこにも見つける事ができない。本当は最後にタジンの1つでも食べで出発したかったけれど、そんな2人の思いは結局叶えられないまま、定刻よりも少し早めのPM6:30にRYAN AIR 8637便は一路Dusseldorfへと出発した。
外には穏やかな日差しの青空がひろがり、FLIGHTはどこまでも順調に進行している。
しかし、実はこの後、これからNEW YORKまでの2日間に及ぶ道のりの中で、2人が最も「難関」になると思っている場面が控えているのだが、それって・・・!?
本来、日本からの渡航者はEU圏内に滞在できる日数が制限されており、「6ヶ月間の中で90日以内」というのがその規定になっている。
2人はこの「90日」をモロッコ入国以前に使い果たしてしまっており、規定に従って言えば、まだEU内の国に入国する事は認められないはずなのだ!!?
旅慣れた人達にその事を質問すると、「そんなに細かくパスポートチェックしないから、別に問題なく入国出来ちゃうと思うよ。」なんて言われてはいた。
実際2人もそんな様な気がしていたから今回のNEW YORK行のチケットをとにかく手配してしまったわけだが、いざその時が近づいてくると、やはり少しづつ不安な気持ちが増してきた....。
乗継便の出発する空港が到着する空港と違うのだから、一旦ドイツ国内に入国しないわけにはいかないし、とにかくここまで来てしまったからには、もうあとは何とか頑張るしかない!!
2人の不安を知ってか知らずか、飛行機は無事にDusseldorf WEEZE空港に到着。タラップを降りると目の前に横付けされていたバスで空港ビルへと移動し、いよいよ問題のパスポートコントロールの前にやってきた。
「Hello.」ドイツ語で挨拶する余裕もなく、どぎまぎしそうなのを堪えながらパスポートを審査員へと突き出した。待ち時間が、いつもよりやけに長いように感じられる。もう、2人ともかなりドキドキしながら審査官の手元だけを見つめ続け、全ての審査が終わるのを待つこと多分30~40秒くらい。ようやく審査官が神妙な顔でウンウンと頷いたかと思うと、「バン!!」という大きな音と共にハンコをパスポートに押してくれた。
EU入国成功!!これでまず間違いなくNEW YORKまで行けるはずである。2人とも、ホッと胸を撫で下ろした。
それにしても、ドイツはやはりもう冬に入っているらしく、T-shirtと薄手の上着だけで到着した2人の身体に刺す様な冷たい空気が入り込んでくる。夜中に到着した事と、雨が降っている事なんかも寒さをさらに厳しいものにしているのであろう。
暖かかったAFRICAから、寒さの厳しいEUROPE(&AMERICA)へ。
それは、財布の中身に対してもまた、同じ事が言えるのかもしれないな....。