17 December, 10

「This is my Job…。」

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“風の宮殿”と呼ばれる建物のすぐ傍で、2人の老紳士が年代物のカメラを使って人々の写真を撮っている。

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2人のうち、片一方のカメラマンは以前、アメリカかカナダの新聞でその“仕事ぶり”が取り上げられたこともあるようで、古く痛んでしまったその時の記事を、2人も本人から見せてもらった。勿論それは英語の記事だったけれど、本人の言葉によるインタビュー記事の部分を要約すれば、だいたい次の様な事が書いてあったんじゃないかと思う。

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「この仕事はとても好きだよ。今はデジタルカメラが普及してしまい、フィルムのカメラは廃れてしまった感があるけれど、こういう古いカメラを使って撮った写真には、デジタルでは実現できない“喜び”を人々に与えられる力が確実にあると思う。これからもこの場所で、このカメラと共に、たくさんの人々に“喜び”を与え続けていきたいね…。」

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確かに、ネガからポジへと絵を焼き付けていくその過程を見ているだけでも、「どんな写真が出来上がるんだろう…。」という、期待と不安がない交ぜになった“ドキドキ”を感じる事が出来る。そして、実際に上がって来た作品の出来が良かった時の“嬉しさ”、または、写りが良くなかった時の“残念”な感じ…。

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どちらに転んでも、撮ったことを後悔するような事は決してないと思う。そして、その場で手作業によりプリントされ、オヤジから手渡されたその1枚の写真は、パソコンの中で“ファイル”に入れられた数千枚のデジタル画像なんかより、鮮明に記憶の片隅に焼きつけられるんじゃないだろうか。

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実際にオヤジと接してみれば、やはりインド人的な「商売気」にも触れる事になるし、新聞のインタビューで話した言葉はどこまで“本気”なんだろうか…なんて、考えてしまう可能性もあるけど、もし彼が今でもあの記事で語ったような“誇り”を持ってこの仕事に取り組んでいるのだとすれば、それは本当に素敵な事だと思う。

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そういえば、この場所で写真を撮っている間中、すぐ傍の土産物屋で働く若者から「ウチの店に寄って行きなよ。安くていいモノが揃っているから。」という、お決まりの誘いを受け続けたのだが、2人には特に“買い気”もないし、とにかく断り続けることとなった。それでも相手はなかなか諦めが悪く、途中からは「また“インド的”なウザいやつに捕まっちゃったなぁ。」くらいのことを心の中で思っていたのだけれど…。

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最後、写真を受け取った2人がすぐ傍のバス停から出るバスを上手く掴まえられないでいると、そいつが路上に出て掴まえるべきバスを教えてくれたりと、何かと世話を焼いてくれるのである。そのくせ、それを恩着せがましく商売に繋げようという気も、特になさそうな様子。案外、悪いやつじゃないのかもしれない。こうして見ると、純粋そうな顔をしてるし。曰く、「さっきは、うるさく言って2人の邪魔をしちゃって悪かったな。でも、あれが俺の仕事なんだ。別に、邪魔をしたくて声を掛けてるんじゃない。モノを売る為に人々に声を掛けて、買ってくれるように勧誘する。そうやって金を稼いでメシをくってるんだ。だから、あんまり悪く思わないでくれよな。俺、日本人は好きなんだ。」
これに似た事は、ヴァラナスィのガート上でも、1人の物売りの少年から言われた覚えがある。「これが、俺の仕事なんだ…。」当たり前のことだけれど、言われてみれば確かにその通りで、あいつがこのインドという国で金を稼いでいくためには、しつこいくらいに観光客にすがりついていく「根性」が、どうしても必要なのだろう。そう思って考えてみれば、「インド人はしつこくて、鬱陶しい。」と、一言で片づけてしまうことには、何か抵抗を覚える気にもなってきてしまうのである。ここはインドであり、インドにはインド流の“生き方”がある。…結局のところ、そういうことなんじゃないかな…って。

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