「列車の旅。」
“Pink City”Jaipur(ジャイプル)を離れて、今度は“Blue City”と呼ばれる町Jodhpur(ジョードプル)へ。列車は今日も出発が遅れて、駅の構内で昼飯も食べずに、随分と待たされることになってしまった…。
コルカタからヴァラナシ辺りまでの旅路では「インドの列車って、以外と時間通りに運行してるなぁ。」…なんて思ってたけど、それはその頃2人が使った列車がどれも、始発列車だったからなのかもしれない。
昔、どこかで聞いた様な「今日来るはずの列車が、明日になってしまう。」と言う様な事態は、あまり“なさそう”ではあるけれど、2~3時間の遅れくらいは、今でも結構“当たり前”の様です。
ホームに漂う人糞の臭い(線路の上に、たくさんの人糞が落ちている。)を、読書に集中することでやり過ごしながら、片方では聞きとりづらい英語のアナウンスに耳を傾け続ける。
そういえば、2人がインドに来る前に抱いていた“インドの列車のイメージ”のひとつに、「屋根まで人が溢れるほどの、乗車率200%くらいの混雑。」ってのがあったんだけど、あれはもう、一昔前の古いイメージなのだろうか。これまで移動してきた線路の上では、すれ違いざまに眺めるローカル列車(短距離列車)にも、そういう状況は全く見られなかった。
大きな荷物を抱えて旅をする自分たちの立場を考えれば、そんな混雑にはぶちあたらない方が幸せなのは分かっているけれど、無いと思うとそれはそれで、何となく寂しい様な気もしてくる。…微妙で、複雑な心境である。せめて“対岸の船”から眺めることによってだけでも、その雰囲気を味わってみたかったのだが。
今日も、列車は確かに遅れたが、指定の座席はきっちりとチケット配分がなされており、“思いがけない混雑”なんかに遭遇する様なことも、特になし。それどころか、その8人用のボックス席(対面して6人掛と、通路を挟んだ逆の窓際に2人掛)には2人を入れて5人しか客がなく、みな広々と席を使いながら快適に移動をすることが出来た。
同席した家族は非常に無口な人々だったが、それはこちらも同じ事で、お互いに最小限の挨拶や笑顔以外にコミュニケーションすることもない。でも、それはそれなりに気持ち良く穏やかな雰囲気を保ちながら、リラックスした気分での“気楽な列車旅”となった。
窓の外の風景は砂漠地方特有の薄水色の空に覆われていて、そこから発散される薄黄色の太陽光が、地面に濃灰色の影を作りだしている。
窓の内側から見ているだけでも「暑そうだなぁ…。」と思える風景なのに、エアコンの効かない2等寝台の車内にいても涼しく快適に過ごせるのは、やはり今がインドの冬だから、なのだろう。窓を開けると風が冷たくて、思わずストールを巻いてしまったくらいだ。
そんな時には、やっぱりチャイを一杯。列車の中で買うチャイの値段は大抵5Rs(≒10円)。たまに6Rsとかで売ってるのを見ると、「なんだよ、高いなぁ。」なんて思ってしまったりもする。日本円で考えれば2円しか違わないんだけど…。
とはいえ、その国に入ったらその国の価値基準で生活をしていかないと、地元の人とのすれ違いも生まれてくるだろうし、人々の暮らしを理解する事も出来ないだろう。向うが“ツーリスト・プライス”を吹っかけてくるのなら、それは仕方がないことだろうけど、出来るだけ地元の人と同じものを、同じ値段で買って、同じ価値観を少しでも共有しながら生活して(旅して)いきたいと思う。…何て言って、6Rsのチャイが「高い!」なんて言ってるのはもしかしたら自分たちだけで、インド人は全くそう思っていないのかもしれないけど。…ただ“ケチ”なだけかな、やっぱり!?