「砂の海」
朝起きたら、宿にヒロユキ君が来ていた。
ヒロユキ君は、Chaouenにいた時に2人が夕食を食べに行っていたレストランで毎日のように顔を合わせていた東京からの旅人。かなり長期でアジア方面から旅をしてきており、2006年のドイツワールドカップはタイのバンコクでTV観戦したと言っていた。
そんな彼と久々に再会し、しばし宿のロビーで近況報告。私たちは明日ここを出発するつもりだったから、本当にギリギリのタイミングで出会う事ができた。旅のルートは人それぞれだけど、同じ様な旅をしている人たちは同じ様な情報を選び取っていくから、長い旅程の中では、こうしてそれぞれの道が交錯してくる事もあるのだろう。
午後はいつも通りに本を読んだりインターネットをしたりでゆっくりと過ごし、夕方になってから砂漠へと散歩に出掛けた。
ここ数日は毎日同じように一日を過ごしてきたけれど、この何一つ娯楽がない町でこうやってゆっくりとした時間を過ごす事が、こんなに心地よいものだとは思わなかった。
快適な宿と、本を読める時間と美味しい料理。人生にはそれ以外何もいらないんじゃないかとさえ思えてくる。
そして、それに加えてここには「砂漠」というスペシャリティがある。こうして毎日足を運んでも、いっこうに見飽きるという事がない。砂が作り出す様々な曲線やボリューム感がこんな風に見る人の気持ちを穏やかにしてくれるものだなんて、実際ここに来るまで想像もしていなかった事だ。
この「砂の海」の中で夕陽を眺めるのも今回は今日で最後になるけれど、ここには必ずまた戻ってくる事になる気がする。その頃には、ファティマも大きくなっているんだろうな。